今日も眠る

@ramune_01414

僕は最近ひどい夢をよくみる。


母が痛々しく殴ってきたり


ひどい言葉を浴びせてきたり


でもそれはただの夢である


起きれば心配した母親が気に掛けてくれる


なんて、幸せなんだろうか。


僕の体の傷を見て泣いてくれたり


吐き出すような嫌味を全て飲み込んでくれる


でもまた僕は、夢に帰らないといけない。


優しい母が部屋を出ると


僕はまた悪夢に苛まれる。


母はもうここには戻ってこない


また僕は悪夢を見る。


起きればまた母が心配してくれるだろう


そして僕は目を閉じる



虫唾が走る夏の暑さ


蝉の声が畳を伝って響いている。


あまりの暑さに


水をくれと頼んだが


母は怒鳴り散らかし僕を床へ叩きつける


視界が濁って解像度が低くなる


どんなに辛い思いをしても


夢から覚めれば優しい母がいるのだ


それをまちぼくはゆっくりと目を閉じた。


でもいつもと訳が違かった


いつまで経っても夢から覚めないのだ。


僕を気に掛けてくれる母はどこにもいない


僕の知らない母がずっと目の前にいる


すかさず布団にくるまった


何度眠っても母はいない


あまりのことに僕は頭を掻きむしる


ありえない。と


すると母が口を開いた。


「いつから頭がおかしくなったのか」


古くなったドアを思いっきり閉め


母は出ていってしまった。


僕は数秒時が止まった気がした


あぁ、そうか。そういうことなのか


憎たらしい母を見るあまり


優しい母を見るようになってしまったんだ。


いつの日か現実と区別がつかず


おかしくなってしまったんだ。


それを知ってしまった僕は


もうここに優しい母はいないのだと


考えられなかった。


でも、もうここにいる意味は何もない


だが僕はまだ17だ。


焦る必要もないと戸惑うこともあった


でもそんなのはもうどうでもいい


優しい母がいないのなら


もう






人生最後の猛暑であった。








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