第8話
母親・青木美佐絵は一番奥のボックス席にいた。初対面だがすぐにわかった。独特の強烈なオーラを放っているからだ。年齢はおそらくは五十代の後半。顔立ちは派手なほうで、場末のスナックの雇われママが旬をだいぶ過ぎちゃった感じ。
――まいったな――
電話では相当に厳しい苦情を言ってくる客でも、実際に顔を合わせれば態度を軟化させることが多い。だからこそ苦情対応はすぐに出向いていくに限る。
ところがこの女は顔を見ても電話でのきつい印象が消えない。むしろ増幅されてくる。たまにこういう手合いがいる。容赦ない苦情というのは、子どものいない高齢女性に多いものだが……。先方もすぐにこちらを識別した。乱暴な手つきでたばこをもみ消し、にらみつけてきた。
――夫婦そろってこれかよ――
という率直な感想を顔に出すわけにはいかない。原田は努めてにこやかに近づいて行った。
「お電話いただいた青木さまですね。東西生命の原田です。お待たせして申しわけありません。このたびはまことに……」
「――どういうことよ」
声は激しい苛立ちをはらんでいた。
「……はい?」
「前のときに、保険のことは最初にあたしに言ってきなさいって言っといたでしょう」
どうやらケンちゃんが言っていた前回のトラブルのことだ。支社を悩ませたのは意外と妻のほうかも知れない、と原田は思った。恐縮した素振りで腰をおろす。
「まさか払ってないでしょうね。あいつに」
警戒感丸出しで寄ってきたウェイトレスに、荒川はアイスコーヒーを二つ注文した。
青木美佐絵――ミサちゃん――はウェイトレスが去っていくのも待たず、怒りの口調で言った。至近距離からだと、肌に蓄積された年齢とそれを厚めの化粧で隠そうとして失敗している様子がよくわかる。
身につけているのは高級そうな生地のワンピースだが、ややくたびれて見えるのはパーマのとれかかった髪型のせいか。甘ったるい香水が鼻にうるさい。あんまりカッカするとお肌に悪いですよ、と腹の中で言ってみる。
「どうなの。手続きなんかしてないでしょうね。あの人に払っていたとしたら、すぐに取り消して。お金はあんたたちがあの人から回収して」
――まったく。どこがだいじょうぶなんだよ、ケンちゃん――
「その前に」横から荒川が言った。「運転免許証か健康保険証をお持ちですか」
「え」ミサちゃんが眉を寄せる。「何ですって」
「拝見できますか」
「何でそんなもの」
「本人確認のためです。生命保険契約の内容は厳重に保護されるべき個人情報の一つです。万が一にも部外者にお話しするわけにはいきません」
「あたしを疑うの?」
荒川はしっかりとうなずいた。
「規則です。私どもは今、はじめてあなたにお会いしました。あなたが本当に青木美佐絵さまだと確認できるまで、ご契約に関することは一切お話しできません」
ミサちゃんは荒川のことを何か気味の悪い動物でも見るように、バッグから運転免許証を取り出してテーブルに置いた。荒川はそれを手に取り、写真と実物をまじまじと見比べた。その間、ミサちゃんは居心地悪そうに眉をしかめていた。
「――ありがとうございます。確認できました。ではお答えいたします。健吾さまにお支払いはしておりません。というより、できません」
「ふん、そうよね」ミサちゃんは言った。「枠はもうないものね」
「枠とは何のことでしょう。健吾さまは受取人ではないので請求権をお持ちではないということです。当然、保険金のお支払いも――」
ミサちゃんの目が光った。
「ちょっと待って。保険金って何よ」
荒川も何か変だと感じたらしい。
「ご存じないのですか」
「知らないわよ。あの男、まだ別に加入していたの? あんたたちを呼びつけたのは、また保険を担保にお金を借りるためじゃなかったの」
「違います。省吾さまのご契約の死亡保険金のお手続きについてお話しするためです」
「省吾? 保険? そんなものがあったの」
「そうです」
「あの野郎」ミサちゃんが奥歯を噛んだ。「嘘つきやがって」
原田は心の中で目を覆った。ただでさえややこしい案件なのに、事態はさらにこじれたみたいだ。
「あたしはただ、来客の気配がしたので、誰が来ていたのか問い詰めたのよ。ごまかそうとするから、名刺を出しなさいって言って……。あいつは、あなたたちが来ていたのは、また貸付を受けようとしたんだって言ったわ。でも枠がなくて駄目だったって。あたしはそれが信用できなくて、きっとまた少し枠ができたので、あたしに内緒で借入れをしようとしたのだとばっかり……」
「そうではありません」
ミサちゃんは二人に詰め寄った。
「あの子が保険に入っていたのなら、保険金がおりるのね。いくらなの」
「一億円です」
「いち……おく?」
ミサちゃんの目が二倍くらいに広がった。顔を厚く塗りたくった初老女の四白眼は、なかなかに不気味である。
「そう……だったの。……ふうん」
あの子は一時、羽振りがよかったんだものね。そうつぶやきながら、ミサちゃんは再びアイスコーヒーのストローをくわえた。指先が震えていた。ストローの先からしずくが垂れ、服にしみができたのも気づいていない。鼻孔がふくらみ、青白くしなびた頬にはっきりとわかるほどの紅が差してきた。
興奮しているのだ。無理もない。会社の資金繰りが苦しいのなら社長夫人の暮らしぶりに影響しないわけがない。見たところあまり金銭的に堅実な性格ではなさそうだし……。
一億。もうひとむかし前の服を着なくてもよくなる。しみったれた生活を送らなくてもよくなる。そんな思いが頭の中を飛び交っているに違いない。
「受取人は父親……じゃないのね。誰なの」
「それがはっきりしないので、困っているところです」
ミサちゃんは怪訝そうな顔をした。
「どういうこと。決まっていないこともあるの」
「受取人は加入時に契約者が指定しますが、途中で変更することもできるのです。省吾さんは亡くなる直前に、受取人を変更する手続きをとっていました」
「誰。誰に」
「母である美佐絵さん、妹の由……」
「あたし? あたしなのね。本当に!」
歓声を上げ立ち上がった。まばらな客が何ごとかとこちらを見た。
「ほほほ――あの子ったら。はは。さんざん苦労させられたけど。生きてるうちは親孝行なんて何もしてくれなかったけど。陰気で薄気味悪くて、いけ好かない子だったけど!」
「あの、青木さ……」
ミサちゃんは周囲の視線に気づいて声を落とした。しかし興奮した様子は変わらない。
「結局そうだったのね。本当はあたしのことが好きだったのね。実の親子じゃなくたって母親だものね。ああ。そうだったのね」
ミサちゃんはテーブルの下でガッツポーズをとっている。そんな他人の小さな幸福に平気で水を差すのが荒川直樹である。
「あなたが受取人と決まったわけではありません」
「――何?」獣のような眼で、ミサちゃんが荒川を見た。「受取人はあたしなんでしょう。今そう言ったじゃない。誰にもあげないわよ」
荒川は事情を説明した。
「少なくとも今のままではお支払いできません」
「どうして」
「契約者の意思が確認できないからです」
「契約者って誰よ。あたし?」
「違います。省吾さんです」
「何言ってるの。もう死んじゃってるのよ」
「省吾さんが生前、母親であるあなた、妹さん、弟さんのうちどなたに保険金を残したがっていたか、お聞きになったことはありませんか。あるいは、何か手掛かりとなるようなものをお持ちではありませんか」
原田は小さくため息をついた。当人に正面から訊いてどうする。
「そんなの知らないわよ。でもあたしを指定してたんでしょう。それでいいじゃない」
「受取人を指定する書類は三通ありました。一通はあなたの分ですが、残りの二通はそうではありません」
「わけがわからない。説明しなさいよ。あんた一体……」
荒川はここでもう二回説明しなければならなかった。
「――あたしに決まっているわ。だって、きょうだい仲はすごく悪かったのよ。血のつながりもないのに手をかけて育ててやったのはあたしなのよ」
「どうやらあなたは判断材料をお持ちではないようですね。私どもはさらに調査を続けます。お子さんたちに連絡を取って――」
ミサちゃんははっとして、
「ちょっと待って。二人はまだこのことを知らないのね」
「わかりません。私どもからはまだお伝えしていません」
「だったらあたしから話すわ。保険会社より母親から話したほうがスムーズにいくに決まっているし、それに……そうか、ようするに余分な書類があるからいけないのよね。貸して。あたしが処分しておくわ。二人にはよく言っておくから。ね」
瞳があやしい光をはらんでいるのは保険会社の職員でなくたって気づく。
「それはできません」
「どうしてよ。あんたたちだって、邪魔な書類がなくなれば話が早くて楽じゃない」
荒川は首を振る。
「受取人を決めるのは契約者です。その契約者がすでに亡くなっている以上、この名義変更請求を取り下げることはできません。どなたが正当な受取人なのかについて手掛かりがないとすれば、新しい受取人となる可能性のある方々全員で話しあっていただいて、代表受取人を決めていただくしかありません」
「代表ならあたしよ。だって母親だもの」
「では、残りのお二人に同意書を書いていただいてください。この契約の死亡保険金受け取りの権利を持つことを確認した上で、自分は代表受取人となる権利を放棄して、あなたを指定することを述べ、日付、住所、お名前を記入し、捺印をいただく必要があります。捺印は実印で、発行後三カ月以内の印鑑証明書を添付していただきます」
「じつい……」
ミサちゃんは絶句し、急に愛想笑いをした。
「ち……違うのよ。あんたたちは勘違いしてる。分けるのよ。みんなで。当たりまえじゃない。独り占めなんてしないわよ。いやだわ。あたしが二人をだまそうとしていると思ってるんじゃないの。そうじゃない。お金はみんなで――」
「代表受取人が決まれば、会社は全額をその方にお支払いします。その後のことはお客さま側で決めていただきます」
「……そうなの」
ミサちゃんの視線が揺れている。
「これは規則です。同意書がそろわない限り、お支払いすることはできません。あなたからお伝えしづらいのであれば、私どもから――」
「駄目」ぎりっ。何かと思ったら歯ぎしりの音だ。「わかった。――いいわ。この件しばらくあたしに預けて」
「私どもとしては、一日も早くお支払いすることが顧客サービスだと考えています。すぐにお二人に連絡をとって、事情をご説明するのがいちば――」
「いいから預けなさい!」
さすがの荒川もちらと原田を見た。
「――わかりました。お待ちしましょう。当社としては、お二人の同意が確認できれば問題はありません。ただし無期限でお待ちするわけにはいきません。明後日までにご連絡いただけますか」
「あさってなんて無理よ。一週間ちょうだい」
「では一週間後までに。それ以上はお待ちできません」
「この……」
これまで話していたのは荒川だというのに、ミサちゃんはなぜか原田を睨んだ。ええっ、おれかよと原田が思っていると、彼女はため息をついて、自嘲気味に話し始めた。
「――もうすぐ、首でもくくるしかなくなるところだったのよ」
あんたはそんなタマじゃないだろう――と思うだけで口には出さない。この手の連中の話に本当のことは半分も含まれていない。ただ心のガードが下がっているときの発言には、後々重要となる情報が含まれていることもあるから要注意だ。
「御社の経営が思わしくないということでしょうか」
ミサちゃんはそれには答えず、
「説明しなくたってわかるでしょ。もうおしまいなの。貸してくれるところがない。リストラしても、残った従業員の給料も出ない」
どうやら工場の経営は崖っぷちを越えかけているらしい。
「あの男とあたしはねえ、そろって連帯保証人になってるの。工場がつぶれたら個人で返さなきゃならない。そんなの無理に決まってる。あたしの人生は終ーわり。はは」
「御社の経営状態は存じませんが、返済がむずかしいのであれば、債権者である金融機関に返済猶予の申し入れをされてはいかがですか。任意整理や自己破産という手段もあります。法人でも個人でも、必要に応じて法的制度をご利用になるのは悪いことではないと思いますが」
「そんなことはわかってんのよ」ミサちゃんが吐き捨てるように言う。「嫌なのよ、あたしは! この歳からまた貧乏なんて」
店長らしき人物が店の奥から、苦々しい顔でこちらを見ている。原田はそれに視線で答えると、周囲がみな聞き耳を立てていることに気づいた。――まずいな。
「あの、ここではなんですから、当社の応接へ……」
「あたしに払いなさいよ。親のほうがえらいんだから。子どもなんて親に譲るのが当たりまえじゃない。あれだけ面倒みてやったのに、あの子はいつも見下すようにあたしを見ていた。まるで憐れむように。ちょっと勉強ができるからって。あたしが高校中退だからって。陰気なガキのくせに」
聞いちゃいない。それどころか声のトーンが高まっていく。
「そうよ。あたしは後妻。あんな陰気で、何考えてるのかわからないようなのが、あたしの子のわけないじゃない。最初に会ったときから何だか気味が悪かった。目つきが陰気で、こっちの考えが見透かされているようで、一緒にいるだけで落ち着かなかった。お化粧をしていて背中に視線を感じると、あの子が冷たい目でじっとあたしを見ていた。ぞっとしたわ。あの子と同じ家にはいたくなかった。あの男は、あたしがしょっちゅう外出してたことを責めたけど、それはあの子のせいなのよ」
論理の飛躍は興味深いが、今は少しでも早くこの面談を終わらせたい。
「お支払いはいたします。書類の整備ができれば。何度もそう申し上げています。ご主人にもお願いして――」
「主人なんてやめてよ。あんなクソ野郎。そんな話よりお金よ。省吾。生きてるうちはただの嫌なガキだったから、陰でさんざんひっぱたいてやったけど、結局は母親に感謝してたのね。わかってたんだわ。本当に大事な人が誰だったか。ねえ」
感極まるミサちゃんの感情。ああ、しばらくこのロイホには来られないな。
「あたしはね、二十年ちょっと前、あの男に口説かれて、押し切られて結婚しちゃったのよ。それまでは五反田のスナックで働いていたの。あの男は客だった」
「青木さ……」
「別に好きなタイプじゃなかった。でも金持ちだったの。当時は会社も景気がよかった。今みたいに貧相じゃなくて、着るものだってこざっぱりして、金払いがよくて、店の常連の中でも人気があった。紳士だって。いろいろとプレゼントもくれて……。いい暮らしができると思った。それが間違いだった」
「あの……」
「最初はよかった。あの野郎は外で女を作ったりしてたけど、別にそれでもよかった。お金はあったし、あたしは社長夫人、奥さまってちやほやされて、高い服を着ておいしいものを食べて、たまに若い男と遊んで」
次のせりふは満面の笑みだった。
「バブルがはじけてもうちは大丈夫だったのよ。特許があったから。内容はよくわからないけど、これがあれば特許料が入ってくる。そもそもあたしが結婚を決めたのもそれがあったからよ。あれがあればもう、一生安泰って思った」
そして急に半泣き。
「それなのに、あの馬鹿野郎。業者の口車に乗せられて、その権利を売っ払っちゃったのよ。資金繰りだって。生きるための一縷の望みがなくなった。まったく先が読めないというか、思慮が浅いというか……。あれがなけりゃあんなボロ工場、あっという間につぶれてしまうわ。信じられない。クズ。無能。馬鹿。ごみよ。カス。死ねばいいのよ。――いいえ死んでも駄目」
恨みと絶望が瞳の中で燃えている。
「先月、生命保険を解約しやがった。東西じゃなくて別の会社の、もっと大きいやつ。あたしに黙って。資金繰りだって。そんなもんで追いつくわけないのに。本当にもう救いようのない馬鹿」
原田は頭を回転させた。生命保険の解約が先月だとすれば、まだヤミ金まではまりこんではいないだろう。が、それも時間の問題だ。
瀬戸際の中小企業のオヤジは資金繰りのためなら何でもやる。証券会社時代に危ない橋を渡りそこなった社長の末路をいくつも見た。たいてい悲惨だった。今どきは取り立て側のノウハウも洗練されているのだろうが、基本的な方法論は大きく変わってはいないだろう。このまま行けばケンちゃんだって、じきに筋のよくないお兄さんたちに囲まれて、地図で危険な山道ばかりを探したり、内臓の数を数えるくらいの体験はすることになるかも知れない。
原田に言わせれば、傾いた町工場などさっさとたたんで自己破産でも何でもしてしまえばいいのにと思うのだが、経営者という人種はそうは考えない。限界を超えて我慢してしまう。そして再起が絶対不可能になった時点でようやくカミングアウトするのだ。ほうら私の腹に空いた穴はこんなに大きいんですよう、もう絶対にふさぐことなんかできないんですよう――そう叫びながら倒れ込む。どれだけ広い面積を血だらけにできるかを競うように。そんなのは、道端で幼児に向かってコートの前を広げる変質者と大差ない。露出狂のマゾだ。
いざとなれば生命保険があると考える社長さんは全国にたくさんいるのだろうが、ケンちゃんはどうやらそのタイプではない。他社の大口契約を解約してしまったのがその証拠だ。それでも解約手続きが済んでしまってから、死ぬほど――うっかり死ねないほどか――後悔したのではないか。切羽詰まった人間が不可解な行動に出ることはままある。発作的に電車に飛び込むよりはよかったのだろうが、最善策だったかどうか。
だとしたら、降ってわいたような一億円は、まさに奇跡に思えただろう。息子の死によってもたらされた天の恵み。ケンちゃんが目の色を変えるのも無理はない。
――急がなきゃな――
父親に冷静な判断能力がなく、母親がこれほどの情緒不安定となれば、あとは子どもたちに期待するしかない。
並行して供託の準備をしよう。隣りにいるこの岩石野郎を動かすのは骨が折れるから、誰か別のやつに――そうだ、あの小娘。事務的なことはあの笹口にやらせよう。おれに電話を回してきた罰だ。戻ったらさっそく……。
「――だから出ていくことにしたの。あたし」
いつの間にかミサちゃんが秘密を打ち明けている。一瞬、思考がついていかなかった。
「はい?」
「あたしのことをわかってくれているの。あの子は健気だからお金なんていらないって言ってるけど、本当はあったほうがいいに決まってる。二人でもう一回、始めるのよ」
「それは一体――」
「お願い。もう貧乏なんて嫌なのよ。雪国の小さな漁師町の暮らしなんてあんたたちにはわからないでしょう。その町で母子家庭で、貧乏で、さんざん苦労して悔しい思いをして、大人になってやっと……やっと手に入れたと思ったのに。みんなこぼれていく。また墜ちろっていうの」
さまざまな負の感情が複雑に入り混じった表情。原田はわけもなく、寺院の大きな掛け軸に描かれた、地獄絵図の中心にいる魔王の顔を思い浮かべた。
「あの子というのは」
「シャドウのたっくん。歌舞伎町のお店の子。あの子だけよ。あたしのことをわかってくれているのは」
受取人候補エントリーナンバー・ワン、母親は切ない表情で虚空を見つめた。
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