第2話 混沌
俺は今は亡きターゲットの家を出たあと、近くの公園で変装をし俺の家へ向かった。Y氏が 殺されたことで発電所の計画は破綻するだろう。
「そこの旦那、今ならいい女抱けまっせ。」
「・・・。」
「試しにどうです?今なら半額で・・・。」
「・・・。」
俺は風俗店の従業員を無視した。町とスラムに近いところではこういった風俗店や、違法薬物販売店など法に触れる店が多くなる。特に風俗は体を委ねるだけで大金が得られるという理由でスラムの女性の半分は風俗で働いている・働いていた。俺も一度だけ風俗店に入ったことがある。鼻の下を伸ばしきったバカなやつを殺したんだっけな。
「ねえ、あんた。私と一晩寝ない?」
「・・・。」
俺は再び無視をする。風俗店に働うための条件は意外と厳しい。大体は胸が大きい・体を清潔にできる環境・性欲がほどほどな人という条件が一般的だ。風俗で働きたい女性は多いため、これらに1つでも当てはまらない人は大人なら身売り、子供だと売春をする。こちらは風俗とは違って体の関係を持つことが多いためあまり人気ではない。しかし、やはり大金は手に入る。スラムの女性の8割は風俗か身売り・売春をしている。
一方で男は何をしているか。一番人気は軍に入ることだ。軍に入れば訓練兵中は衣食住全て国に保証される。更に卒業したあとも何もしなくてもある程度の金は入ってくる。次に人気なのは肉体労働。そして、ほんの少数の人が裏社会の職につく。俺はその少数の一人だ。
そんな過酷なスラム街である事件が発生した。といってもただの事件ではない。都市で言うところの事件は殺人や窃盗だが、スラム街で事件と言ったら大体住む場所を奪われたとか、ヤクザとの抗争とかだ。スラム街では殺人や窃盗はまあまあ多い頻度で発生している。今回はヤクザの抗争だ。一見無関係そうに見えるが、ヤクザの抗争の時、スラムの住民は自由に外に出られない。まっ昼間から銃撃戦が発生する。ヤクザにみかじめ料を払っている風俗店やバーは確実に巻き込まれる。つまりヤクザの抗争はまわりの人にも被害が及ぶのだ。言っておくがこの世界に任侠を重んじるヤクザはもう絶滅危惧種のようなものだ。周りに迷惑をかける事を平気にする。
さて、俺はヤクザの抗争中だろうと仕事をする。今回のターゲットは俺の住んでいる町の隣に縄張りを持つヤクザ、青龍組の総長だ。今抗争をしているのは都市の裏社会に潜むヤクザ、天楼組と青龍組の隣町のヤクザ、白虎組だ。白虎組と青龍組の不仲は有名で、抗争にしては高い頻度で戦っている。今回の依頼人は天楼組の総長。天楼組総長は総長がやられた青龍組に、総長を殺したのは白虎組だと流すことで、抗争相手の白虎組、そして将来敵になる可能性がある青龍組どちらの勢力を削る狙いだ。
今まで、何度も多様な人を殺してきた俺は今回は、変装で行こうと思う。青龍組総長は週に1度ある総会のあと、車で帰宅するらしいがそのドライバーになりすます。
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