パレット

池野華龍

本編

第1の証人 殺し屋・紅鬼

第1話 紅鬼

 俺は、返り血で服が紅く染まることから「紅鬼」なんていう異名が付けられた。俺は殺し屋。元々名前なんてないので自分で紅鬼と名乗るようにした。この国は貧富の格差が大きくなりすぎてしまい政府ももうお手上げ状態だ。首都の外れに行けばスラム街が広がっている。俺が殺し屋を仕事にしているのは、赤ん坊の時、親にスラムで捨てられたが、拾った人が殺し屋として名高い「孤高の鷹」だったのだ。俺は師匠から殺しのテクニックを伝授され、師匠の跡を継いだのだ。政府のおえらいさんもよく利用しているため、俺は裏社会では有名な存在だ。


ーピロン。


俺の仕事用のスマホが震えた。見ると例に漏れず殺しの依頼が来た。ターゲットはY氏。依頼人の政敵らしいY氏はどの国にも存在する原子力発電問題に賛成している1人で、このままでは彼の町に原子力発電が作られてしまう。彼は町民の声も聞いていないので反対派の連中は一刻も早く彼の計画を止めたいはずだ。そこで、依頼人は殺しの選択をした。


 相変わらず政治家の家は豪華だ。スラム街では見ることができないような高級そうなカーペットが引かれている。彼の部屋は2階にあるそうだ。下見の時、彼がベランダで酒を飲んでいたのを見た。私はあまり銃を好まない。銃はターゲットが遠いときに仕方なく使う程度で普段はナイフだ。音が大きすぎて周りの人にバレやすいし、火薬や弾丸を買う金がもったいないという気持ちもある。実際、私は今まで火薬や弾丸を補充したことはない。俺はターゲットの部屋のドアをゆっくりと開けた。

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