第52話 聖と顔を合わせる

 書店で本を探していると、Hカップの女性と再会する。こんなにも顔を合わせるのは、腐れ縁から来ているのだろうか。どんな展開になっても、縁を切れない人間は一定数存在する。


「清彦さん、久しぶりだね」


「聖さん、お久しぶり」


「奥さんはどうしたの?」


「一週間前に離婚したんだ。既婚から独身になったよ」


 夫婦といっても所詮は赤の他人。離婚をしてしまえば、縁は完全に途切れる。


 聖は離婚と聞き、満面の笑みを見せる。他人の不幸を心から喜んでいるのが伝わってきた。


「清彦さんともう一度やり直したい・・・・・」


「それは無理。あのときの傷については、いまだに癒えていないから。一生忘れることもないから」


 暴言については、深く刻み込まれている。どんなに頑張っても、忘れるのは難しいと思われる。


 清彦はあるところの変化に気づく。


「聖さん、妊娠していたんじゃないの?」


「流産したよ。どこの誰なのかわからない人は、出産したくないと思ったから」


「そうなんだ。いい男を見つけて、新しい命を誕生させられるといいね」


 聖の耳たぶは赤く染まった。


「いろいろなことがあったけど、私にはあなたしかいない。やり直すチャンスをいただけないでしょうか?」


「ごめんなさい・・・・・・」


 清彦は書店から立ち去ると、聖は追いかけてくることはなかった。

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