第42話 お墓参り

 桜は息を引き取り、還らぬ人となってしまった。わずか18年間の人生で、どんなことを感じていたのだろうか。


 清彦は墓参りをしていると、桜によく似た女性と顔を合わせた。あまりにもそっくりだったため、亡霊説を頭に思い浮かべる。オカルトを信じるくらいに、二人はよく似ているのである。


「清彦さん、こんにちは・・・・・・」


「桜さんですか?」


「違いますよ。私は双子の妹で、天音といいます」


 桜といろいろと話していたけど、双子の妹の存在は知らされていなかった。家族に関する話はほとんど出なかった。


「姉が本当にお世話になりました」


「たいしたことはしていないけど・・・・・・」


「清彦さんの話をするときの姉は、とっても楽しそうでした。あんなに輝いているところは、ほとんど見たことはありません。私にはいいませんでしたけど、本気で好き

だったのだと思います」


 好きという言葉は本人の口から聞いた。死ぬ直前だったため、返事をすることはできなかった。


「姉が好きになったのも頷けるほど、純粋そうな男性です」


 純粋といわれたことに、胸はおおいに痛んだ。実際のところは、二人の女を同時巣に好きになった不純物である。


「私でよければ、交流と持ちたいと思っています。連絡交換をしていただけないでしょうか」


「天音さんのことをよく知らないから・・・・・・」


「そうですね。初対面に近い人と連絡を取るのは不安ですよね」


 秋絵はストーカー、美羽は毒物を盛ってきた。女性に対して、非常に警戒心が強くなっている。


「ちょっとずつでいいので、距離を縮めていきたいです」


「・・・・・・・」


 天音は無言だったことで、何かを感じ取ったようだ。女性の勘というのは、侮れない部分がある。


「ごめんなさい。先ほどの言葉は忘れてください」


「・・・・・・・」


「姉に対して、手を合わせましょう」


「はい・・・・・・」


 清彦、天音は手を合わせる。親しくしてもらったからか、思いはたっぷりと込められていた。

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