第37話 美羽の作ったおにぎりに毒物?

 清彦は待ち合わせの場所にやってきた。


「山本君、こっちだよ」


 美羽の手招きしている方向に、清彦は足を進めていく。


「山本君、二人で会うのは久しぶりだね」


 清彦は気まずそうにうなずいた。


「そうかもしれない・・・・・・」


「私に何か用があるの?」


 清彦は話をどのように切り出していいのかわからなかった。どんな話し方をしたとしても、言い訳になってしまいそうだから。


 美羽は鞄の中から、弁当箱のようなものを取り出す。


「山本君、おにぎりを作ってきたよ。一つでいいから食べてみよう」


 前回の悪夢がよみがえったのか、全身にびっしょりと汗が流れていた。


「前回よりは上手に作れているから、安心して食べていいよ」


 おにぎりを一口食べる。前回と比べると、味はよくなっていた。


「おいしいかも・・・・・・」


 美羽は悪魔のような笑顔を見せたときには、おにぎりを全部吐き出していた。何かはわからないけど、異物を混入しているものと思われる。


「ゲホゲホゲホゲホ・・・・・・」


 美羽はこちらを振り返ることなく、待ち合わせ場所からいなくなった。あなたに対する復讐はきっちりと果したといわんばかりの態度だった。


 彼女は二股をかけようとしたことを、心の中では許していなかった。そんなことにすら気づけないなんて、人を見る目はないなと思った。


 聖についても、復讐の機会をうかがっている。二人の女性を同時に好きにあった代償は、あまりにも大きすぎた。秋絵がいなくなっても、身の安全を保障されているわけではなかった。


 二股については、二度と考えないようにしよう。命を取られてしまっては、今後を生きることはできなくなる。

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