第34話 我慢の限界を超えた(秋絵視点)

 学校、自宅を往復するだけの生活はあまりにも退屈。たった一つでいいから、刺激のある日々を送りたい。


 スマホだけでなく、パソコンも没収された。ネットでつながっている現代において、第三者とのつながりを完全に断たれている。


 テレビも三日前に没収。楽しみにしていた、番組すら見られなくなってしまった。


 おやつを食べようとしていると、母親にストップをかけられた。


「あんたに食べさせるおやつなんてないわよ。一家の恥さらしは、決められた御飯だけを食べればいいの。栄養は完璧に計算してあるから、しっかりと食べていれば問題はない」


 栄養は完全に計算されていても、満足感はまったくなかった。野菜、大豆食品、魚しか食べさせてもらえず、肉は一度も食べられなかった。殺人事件を犯した人間だって、肉、チョコレートなどを食べられる。秋絵の扱いは、刑務所の犯罪者以下に成り下がっている。


 母はから揚げをあげていた。秋絵は見ているだけで、一つ食べたくなってしまった。


「から揚げをひとつでもつまみ食いしたら、夕食抜きにするからね。明日の朝まで、何も食べられなくなるよ」

 

 母は見せつけるかのように、から揚げを食べてみせる。秋絵はその様子を、歯をくいしばって耐えるしかなかった。


 母は唐揚げを食べたあと、肉のかけらを前に置いた。


「これでも食べれば・・・・・・。今回だけの特別大サービスだよ」


 秋絵は食べたい欲望よりも、プライドが大きく勝った。


「私はいらない。こんなものは食べたくない」


「そう。素直じゃないのね。これをもらっておけば、本物を一つ上げたのに」


 食べていたら、こんなものを食べるなんてみじめといわれていた。どんな展開になっても、けなされていたのは間違いない。


 私は何も悪いことをしていない。それにもかかわらず、理不尽な仕打ちを受けている。こんなことが許されてなるものか。


 包丁を手に持とうとすると、致死量ギリギリの電流を流された。秋絵は正気を保てず、地面に転がり込む前に、母のかすれた声が聞こえた。

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