第29話 秋絵は懲りていなかった

 桜と話をしていると、三股女と顔が合ってしまった。こんなことになるのなら、公園にやってこなければよかった。


 秋絵は一直線に近づこうとするも、すぐに地面に倒れてしまった。桜はどうなったのかを確認するために、三股女に近づいていく。清彦は恐怖心からか、距離を詰めることはできなかった。


 桜は手を差し伸べると、秋絵はゆっくりと立ち上がった。


 秋絵はこちらに足を進めると、再度気絶することとなった。どこから衝撃を加えられているのかは、判断つかなかった。


 秋絵は立ち上がったのち、清彦のいない方向に進んでいく。ストーカーを避けられたことに、安堵の息をついた。


 桜はこちらに戻ってきた。


「山本君に近づこうとすると、強力な電流を流すようにプログラムされているみたいだね。絶対にストーカーをさせないという、執念のようなものを感じるレベルだよ」


 秋絵はあきらめたのではなく、親に監視されているだけ。自由を取り戻したら、ライオンのように向かってくるかもしれない。


「ありえない執念だね。私が同じことをされたら、背筋が凍り付くレベルだよ」


 清彦が青ざめていると、桜は手を優しく握ってくれた。 


「桜さん・・・・・・」


「ごめんなさい。すぐに手を離すね」


「今は優しくしないで・・・・・・」


「そうだね。苦しいときに優しくされると、恋におちやすくなるからね」


 美羽、聖を好きになったのは、苦しいときに優しい声をかけてくれたから。他のタイミングだったら、恋をするには至らなかった。


「私は用事があるから、今日はもう帰るね」


「桜さん、いろいろと話を聞かせてくれてありがとう」


「どういたしまして・・・・・・」


 桜は眼鏡を外す。知的に映っていた女性は、どことなく抜けているように見えた。

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