第28話 37日で破局

 聖と破局した。交際期間はわずか37日間で、三股女よりも短かった。あまりに早すぎる別れに、魅力のなさを痛感させられた。


 公園のベンチに座っていると、聖の親友がやってきた。


「桜さん・・・・・・・」


 本日はメガネをしている。そのこともあって、ちょっとだけ知的に映った。


「山本君、聖と別れたみたいだね」


「ああ。僕の不手際によって、うまくいかなくなってしまった」


「私はそうは思わないけど・・・・・・」


 桜は隣に座った。ピタッとくっつくレベルだったため、無意識のうちに距離を取ろうとしていた。


「桜さん、近すぎないかな」


 桜はメガネを調節する。


「ベンチの幅を気にしていたら、近くなりすぎていたみたいだね。体が触れないように距離を取るようにするね」


 桜は50センチほど距離をあけた。もうちょっと開けたほうがいいとは思うけど、現状を維持することにした。


「聖は何も食べられなくなってしまった、美羽さんのことをすごく気にかけていたの。このまま交際を続けたら、彼女は死んでしまうんじゃないかって」


 美羽の弱々しさは尋常ではなかった。どんな生活を送ったら、あんなになってしまうのだろうか。


「聖自身も情緒不安定だった。山本君が浮気するんじゃないかって、こちらに何度も相談していたからね。二人の女性を好きになった人と付き合うのは、心理的な負担が大きすぎるみたいだね」


 聖は知らないところで、桜に何度も相談していた。そんなことすら想像できないなんて、想像力が欠如している。


「冷たい言い方なのはわかっているけど、幸せにできるのは片方だけだよ。どちらかは必ず不幸になるのを覚悟したほうがいい」


「桜さん・・・・・・」


 桜は空を見上げる。


「一年前くらいに、二人の異性から告白されたの。どちらも甲乙つけがたかったけど、最終的にはしっかりと結論を出した。それをしなければ、絶対にうまくいかないと思ったからね。選ぶ方を間違えたのか、三カ月くらいで交際は終わったよ。眼鏡女子と付き合いたいだけで、私自身には興味を持っていなかったようだったから」


 特定のステータスにこだわる男女はいる。ゲームと同じような感覚で、相手を選ぶのはやめてほしい。


「最終的には二股をかけられた。私は我慢してきたけど、堪忍袋の緒は切れてしまった」


 一人の異性だけを想い続ければ、恋愛はうまくいくのに。人間はそれをわかっているのに、二人以上の異性に恋をする。実に愚かで、メンタルの弱い生き物だと思った。

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