第26話 温度差
聖と交際して、一カ月が経過しようとしていた。
最初は楽しかったけど、徐々に温度差を感じることも増える。交際は長くなればなるほど、相手の嫌なところ、合わないところを知っていくらしい。
母親に説明すると、恋愛はそういうものだといわれた。本当に幸せなのは最初だけで、徐々に地獄に染まっていく。あとはそれを乗り越える、逃げるだけの違いだけだといっていた。恋愛というのは、ハッピーエンドにならないのかなと思ってしまった。
公園で休もうとすると、美羽の姿を発見する。彼氏とはおらず、一人ぼっちだった。
美羽はこちらに気づいたのか、全速力で近づいてきた。
「山本君、久しぶりだね」
「船橋さん、久しぶりだね」
一カ月ぶりに遭った女性は、頬がやつれていた。黒ずんでいることもあって、美人という印象はなくなっていた。
「船橋さん、よりは戻したの?」
「ストーカーを好きになった話は完全にでっちあげ。本音は絶対に会いたくないと思っている」
「僕の交際をスムーズに行くようにしたの?」
美羽は首を横に振った。
「恋愛を応援したのではなく、自分を傷つけないようにしたの。二股されたショックは、吹っ切れるほど軽くないからね」
清彦も心のどこかで、聖は浮気すると思っている。人間の心はいとも簡単に、他に移っていく。
美羽はスカートの裾を直した。
「二股をされていなかったら、聖さんと勝負したと思う。どんな展開になっても、受け入れようと努力もできた」
二股をかけられたショックは、彼女の人生に大きな影響を及ぼす。
「山本君、距離を詰めていい?」
「聖さんを傷つけることになるから、一定の距離を保ちたい」
交際をすれば、あらゆることで制約を受ける。メリットもあるけど、デメリットも大きいと知った。
「二人の女性を好きになっても、恋人になった途端に変えられるのはすごいよ」
「そんなことはないよ。美羽さんに優しくされたことは、今でも強く覚えているよ」
「聖さんとうまくいかなくなったら、すぐに私のところに来てね。高校を卒業するま
でなら、いつだってウエルカムだから」
聖との破局を心から願っている。直接口にしなくても、それをはっきりと感じた。他人の恋愛を応援できるほど、人間の心は広くない。
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