第24話 不純男

 美羽、聖の二人を好きになってしまった。一人の女性だけを愛すると決めていたのに、そういう展開にはならなかった。


 女性は非常に勘が鋭い生き物。美羽は心の中をしっかりと読み取っていた。


「山本君は見た目によらず、不純な生き物だったんだね」


「船橋さん・・・・・・」


 美羽は大きな息を吐いた。


「私も同じようなものだから、裏切り者とはいえないよ。どういうわけか、交際していた男性と強く会いたいと思っている」


「浮気をされたのに・・・・・・?」


 美羽は力なく頷いた。


「浮気をされたとしても、もう一度だけ信じてみたい。私の心の中で、その思いは日に日に強くなっている」


「そうなんだ」


 清彦の心の中に、秋絵を信じる思いは一ミリもない。30年、40年たっても、変わることは絶対にない。そう確信したからこそ、警察にためらいなく通報できた。


「山本君に対する思いも、とっても強かったよ。この人のためなら、裸をさらけ出してもいいと思っていたくらいに」


 すべてが過去形。彼女の心に大きな変化が生じたのは確かだ。


「聖さんと話すようになってから、どうしていいのかわからなくなった。二股をかけられるのではないかと思うと、いてもたってもいられなくなるの」


「どうすれば・・・・・・」


 美羽は首を横に振った。


「話をした時点で、ゲームセットレベルかも。私の心の中で、何かが弾ける音がした」


 先ほどまで青かった空は、ちょっとだけ雲がかかった。


「山本君を見ていると、聖さんのほうをより大切に思っているのが伝わってくる。私は交際できたとしても、すぐにうまくいかなくなるんじゃないかな」


「そんなこと・・・・・・」


 美羽、聖を天秤にかけたことはなかった。どちらも異性もとっても魅力的で、傍にいて呉れるだけで心強かった。


「一つでいいから、思い通りに生きてみたかった。運命の神様はそれすら許してくれないみたいだね」


 清彦も何一つ、思い通りになったことはない。たった一つでいいから、思い通りになってほしい。

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