第19話 盗聴器はガチでしかけられていた

 USBメモリーをチェックすると、小型カメラのようなものを発見する。知識はないものの、盗聴器であると思われる。


 一人の男性のために、ここまでやるなんて。秋絵という人間は、脳内ねじが一本、二本もぶっ飛んでしまっている。


 他の男性についても、同じことをしていたのかな。真実は分からないけど、あの女性ならやりかねないと思った。相手のことは一ミリも考えず、自分の意志だけを優先して生きている。


 パソコンにデータを移したあと、USBメモリーを新聞でくるむ。そのあと、ゴミ捨て場に置かれているゴミ袋の中に投入する。


 USBメモリーを捨てたことで、ようやく安定を取り戻す。これからは行動を監視されることなく、悠々自適な日常を送れる。


 USBに盗聴器が仕掛けられていたことを、聖にラインで伝えた。


「聖さんの推理どおりだったよ」


「やっぱりね。あの女性ならやりかねないと思った」


 三股をしても、悪びれることなく生きている。そういう女性なら、盗聴器くらいは当然といえば当然か。


「盗聴器を仕掛けるなんて、人間としてどうかしているよ」


「そうだね。完全に逝ってしまっているね」


 清彦はふわふわとした感触を思い出し、顔は真っ赤に染まる。


「今日はとっても楽しかったよ。本当にありがとう」


「こちらこそ、ありがとう」


「友達として遊びに行くのは、今回だけにするね。次回に遊びに行くときは、カップルとしていきたいから( ^)o(^ )」


 友達としてではなく、カップルとして遊びに行きたい。心の中に秘めていることは、はっきりと伝わってきた。


「わかった」


「美羽さんとはやり取りしているの?」


「たまにはしているけど、頻度は少なめだよ」


 メールの内容も、世間話に近いものが多い。距離については、以前とさほど変わっていない。


 清彦のスマホに、新しいラインが送られてきた。


「山本君、来週の土曜日に会いたい」


「わかった。どこにする?」


「○○公園にしようよ」


「了解。楽しみにしているね」


 美羽とラインのやり取りを終える間に、聖から新たなラインを受け取っていた。


「山本君、また遊びに行けるといいね」


「そうだね」


 5分ほど待っていたものの、新しいラインはこなかった。清彦はそれを確認してから、スマートフォンの電源をオフにする。周りと遮断させることで、一人でゆったり

と過ごしたかった。

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