第14話 聖からの連絡を受け取る
美羽は目を覚ましたらしく、清彦のところにやってきた。
「迷惑をかけてしまったみたいだね」
「別に気にしなくてもいいよ」
「私をどのようにして、家まで運んできたの?」
家に来るまでの記憶が完全に抜けている。美羽は立ったままの状態で、深く眠っていたようだ。
「明日香を呼んでから、二人で慎重に運んだよ。手などは引っ張ったけど、体には触ってないから安心して」
「そうなの。おんぶくらいはしてもよかったのに」
「明日香にもそういわれたけど、万全を期すことにした。セクハラっていわれたら、言い逃れするのは難しいから」
悪意のセクハラならまだしも、善意を痴漢扱いされるのは厳しい。何のために助けたのか、わからなくなってしまう。
「背中を興味本位で触ったのに、おんぶはできないのか。山本君は大胆かなと思っていたけど、チキンな部分も持ち合わせているんだね」
「背中くらいだったら、許してくれるかなと思って・・・・・・」
「山本君の手つきは、興味90、慰め10くらいに感じたよ。男の本能に基づいて、触
っていたんじゃないの」
背中を触ったときの思考を完全に読まれていた。
「どういうわけか、嫌な気分にならなかったの。本音をいってしまうと、嬉しい気分になれた。彼氏と一緒にいるときですら、こんな感情にならなかったのに。理由はよくわからないけど、肌の相性がよくなかったのかもしれない」
感覚的なものについては、理由を探るのは難しいと思われる。
美羽は大きな欠伸をする。
「もうちょっとだけ眠ってもいい?」
「いいけど・・・・・・」
「山本君、枕をちょうだい」
タンスの中にしまってある枕を、寝不足女性に手渡しする。
「ありがとう。ゆっくりと眠らせてもらうね」
美羽はすぐに眠った。安心しているのか、優しそうな寝顔をしていた。
寝顔をのぞき見しようとしていると、明日香が部屋に入ってきた。
「おにいちゃん、ゆっくりとさせてあげよう」
「そうだな」
「ここで話すのは良くないから、私の部屋に行こうか」
「わかった」
清彦は立ち上がると、明日香はすぐさま手を握ってきた。
「レッツゴー、レッツゴー」
ポジティブすぎる妹は、いつになっても健在だ。挫折を知ったときも、こんな状態でいられるかな。
清彦は久しぶりに、明日香の部屋に入った。中学生になってからは、女性の部屋に入るのを自重していた。
「美羽さんのやり取りを総合すると、おにいちゃんに興味を持っているみたいだね」
清彦は首をかしげる。
「そうかな?」
「男性の家にやってくる時点で、好きだといっているようなものだよ。美羽さんは心の中で、早く告白してほしいと思っているんじゃないかな」
明日香と話をしていると、ラインが送られてきた。
「二股女からのラインなの?」
ラインの送り主を確認すると、宮川聖と表示されていた。
「どうやら違うみたいだね」
明日香は興味があるのか、ラインの送り主を確認する。
「すっごく懐かしい名前だね、小学生のときに、遊びにいっていたよね」
5年前に遊んだ女性の名前をばっちり記憶している。明日香の記憶力は侮れないと思った。
「うん。5年ぶりに遊びに行きたいといっていた」
「おにいちゃんは、いろいろな女性からモテモテだね」
「そうかな。最近までは、声をかけてくることもなかった」
「声をかけたかったけど、タイミングがなかったんじゃないかな。中学生になると、いろいろと面倒なことになるし」
「そうだな」
「聖さんは、数字の苦手を克服したのかな」
聖はそつない女性なのだが、数字だけは非常に苦手とする。5年前に話したときも、一桁の足し算に苦労していた。掛け算になると、教科書をすぐさま閉じていた。
「聖さんは5年前からどう変わったの?」
「胸が圧倒的に大きくなっていた。見た目だけでFカップ以上はあると思われる」
「おにいちゃん、女性のどこを見ているの。普通にセクハラだよ」
「普段は気にしないけど、あまりに圧倒的だったから」
胸のサイズだけで、誰なのかを認識できる。彼女のバストは、女性の中でもひときわ目立っていた。
「聖さんと遊びに行く予定はあるの?」
「返事は保留中だよ」
「いろいろな女性と遊べば、経験値はたまっていくよ。おにいちゃんは圧倒的に、経験不足だから、女性と過ごしたほうがいいよ」
清彦はラインを返そうとするも、指をうまく動かせなかった。
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