第8話 秋絵はハグをしていた男性と破局

 秋絵はハグをしていた男性とも別れた。交際中であることを隠していたことで、相手に愛想をつかされたと思われる。自業自得としかいえないので、同情心は一ミリもなかった。男子生徒と破局したことに、心の中でガッツポーズするほどだ。


 秋絵は懲りることなく、いろいろな異性にアタックをかけていた。彼女の姿を見ていると、異性と一緒にいなければ落ち着けない性格なのかなと思った。


 二股をかけた事実は、学校内に広まってしまった。なかなかよい返事をもらえず、独り身の状態を続けていると思われる。卒業するまで、異性と交際するのは難しいだろうな。恋愛依存症にかかっている女性にとっては、厳しい日々が続くことになりそうだ。


 清弘が弁当箱を開けると、カレーが入っていた。おかずを作る暇がないから、あまりものを詰め込んだらしい。究極の手抜き&手抜き弁当だ。


 カレーは温かいからこそ、おいしいと感じられる食べ物。冷めてしまったら、おいしさを感じるのは難しい。


「山本君、昼食はカレーなんだね」


 清彦は後ろを向くと、美羽はすぐ後ろに立っていた。


「船橋さん、どうしたの?」


「ちょっとだけ話をしたくなって・・・・・・」


「僕なんかでよければ・・・・・・」


「ありがとう。お邪魔させてもらうね」


 学校一の美女と一緒になったことで、たくさんの視線を受けた。ほとんどはどうしてあいつが話しているのかという、嫉妬心、嫌悪感などでしめられていた。  


 美羽の鼻孔は、カレーライスの甘さを感じ取った。


「りんご、はちみつ、チョコレートを入れているという、劇甘風のカレーはにおいが違うね。食べてもいないのに、甘いのがはっきりと伝わってくる」


 美羽は劇甘カレーライスに興味を示していた。


「船橋さん、食べてみたいんだね」


「うん。ちょっとだけ」


「学校という場所では、食べてもらうのは厳しいかな」


「そっか・・・・・・」


 美羽は髪をかき上げる。たったそれだけの動作なのに、男性の心をくすぶるものを持っていた。


 美羽は弁当箱を開ける。


「私もどういうわけか、昼食はカレーライスなのよね」


 隠し味が異なっているからか、色はまったくの別物となっていた。


「色はまったく違うね」


「うん。同じカレーなのかわからないよね」


 美羽は弁当箱の蓋を閉じたあと、自分の席に戻っていく。清弘はそれを確認すると、冷たくて甘いカレーライスを口の中に入れる。冷めてしまっているからか、白米よりも甘く感じられた。


 カレーライスを食べていると、宮川聖に声をかけられた。


「山本君、二人はいつから話すようになったの?」


 聖とは小学生校時代はよく話していたけど、中学生時代から疎遠になった女の子である。5年近くも関わっていないからか、存在自体を消してしまっていた。


「あることがきっかけで、いろいろと話をするようになったよ」


「学校一目立たない男性、学校一目立つ女性の会話はギャップがあるね」


「そうかもしれない」


 聖は5年の間に、胸を大きく膨らませていた。Fカップ~Gカップはあると推測される。


 聖の趣味は音楽。ギターを弾くのが好きで、指にマメができるくらいに練習していた。


 バストは大きく揺れ、体勢をちょっとだけ崩す。あまり大きすぎると、生活するのも不自由なのかなと思った。


「宮川さん、僕に何か用?」


「五年ぶりに、遊びに行きたいと思って・・・・・・・」


 小学生時代に一度だけ、一緒に遊んだことがある。つまらないわけではなかったけど、楽しいと思えるようなこともなかった。ここまで印象に残らないというのは、奇

跡的であるといえる。


「せっかく誘ってもらったけど、そんな気分じゃないんだ」


「すぐには無理だとしても、数か月後には遊びに行ってもらえるとありがたい」


 聖は肩が凝っているのか、何度も触っていた。


「宮川さん、肩の調子が悪いの?」


「胸が大きすぎると、首の周りに血液が届きにくくなるみたい。そのこともあって、肩も凝りやすくなるんだ」


「そうなんだ・・・・・・」


 聖は友達を呼び留める。


「桜、肩を揉んでほしい」


「わかった。座ったほうがやりやすいから、席に戻ろうね」


 聖、桜は席に戻っていく。清彦はその様子を見届けてから、弁当箱をカバンの中にしまった。

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