第7話 復縁を迫る側、復縁を迫られる側

 秋絵と破局したあと、美羽と連絡交換をスタートさせた。とはいっても簡単なやり取りにとどまっている。恋を進展させられそうな予感は、まったく漂っていなかった。浮気されたショックで、恋愛に前向きになれないのかなと思った。


 清彦も当分は恋愛はいいかなと思っている。あわてて異性を作ると、秋絵のような悪女に引っかかりかねない。


「山本君、夜は何を食べたの?」


「カレーライスだよ」


 隠し味としてりんご、はちみつ、チョコレートをいれる。甘いものばかりを入れるからか、辛みはほとんど消えている。辛みを感じる料理のはずなのに、ご飯よりも甘いと感じることもあるくらいだ。


「私の家もカレーライスだったよ。偶然にしてはできすぎているね」


「そうだね。隠し味はどんなものを入れるの?」


「ヨーグルト、コーヒーだよ」


 どちらもカレーライスの隠し味に使われる定番。ヨーグルトはまろやかさ、コーヒーは深みをもたらす。


「とってもおいしそうだね」


「山本君の家はどんな隠し味を入れるの」


「りんご、はちみつ、チョコレートだよ」


「甘いものばっかりを入れるんだね!(^^)!」


 美織は大の甘いもの好きで、いろいろな料理を甘くしようとする。恋愛中毒ならぬ、砂糖中毒にかかっているみたいだ。


 肉じゃがについても、はちみつで味をつける。醤油の塩分はまったく感じず、はちみつの甘さの強い肉じゃがになる。具材は肉じゃがだけど、中身は完全なる別物である。


 二〇秒後、別の内容のラインが送られてきた。


「私のところに、元カレから連絡がきたよ。浮気をしたくせに、もう一度やり直したいみたいだね」


 美羽の元カレも、浮気発覚で破局した。二股をかけるような人物には、天罰が下るようにできている。


「私はすぐに断った。今後は絶対に会うつもりもないよ」


 浮気されたという事実は、時間をかけても解決につながらない。一定値を超えた深い傷は、永久的に残り続ける。


「山本君は、復縁を迫られたことはある?」


「うん。あるよ」


 秋絵は積極的に、復縁を図ろうとしてくる。二股をかけたのに、よりを戻せると思っているのだろうか。


「他人を裏切ったくせにどうして、復縁しようといえるんだろうね。頭がいかれているから、思考がくるっているから、人間としておかしいから、単純に馬鹿だから。脳みそがくるってしまっているから?」


 学校一の美少女も、人間としての闇を持っている。美人に生まれたとしても、幸福な生活を送れるわけではないようだ。


 美羽からラインが送られてきた。


「汚い言葉を使ってごめんね。二股に対する、負の感情は強すぎるみたい」


「船橋さん、気にしなくてもいいよ。僕も同じようなものだから」


 ラインを送ったあと、トイレにゆっくりと向かう。彼がトイレに行っている間に、次のラインを受信していた。



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