第5話 別れを告げる

 清彦は校舎の裏に、秋絵を呼び出す。


「秋絵、この男性に見覚えはあるか?」


 スマホに収めた、ハグ写真を見せつける。証拠をつかまれていた女性は、口を金魚のようにパクパクさせていた。


「どうしてこれを・・・・・・・」


「秋絵の浮気情報をいろいろなところから耳にした。最初は信じていなかったけど、れっきとした事実であるとわかった」


 秋絵は追い詰められたからか、意味不明な発言をする。


「これははめられたんだよ。そうだ、私は完全なる被害者だよ」

 

 どうにか逃げとおそうとする女性に、冷酷な声で別れを告げた。


「浮気するような女と、恋人関係を継続するのは難しい。二人の交際はただいまをもって終了だ」


 秋絵はすんなりとはいかなかった。


「私の愛している人は、清彦だけだよ。体育館であっている男性は・・・・・・」


「同じセリフを男子生徒の前でいえるのか?」


「うん。確信を持っていえるよ」


 自分を守るためなら、平然と嘘をつける。こういう女性は、傍に置いておくと運気を下げかねない。つけているだけで運の悪くなる、ネックレスさながらである。


「僕だけでなく、体を寄せた男子学生も裏切った。秋絵にはこれから、いろいろな天罰がくだると思う」


 男子学生についても、黙っているとは思えない。二股をかけた女性に対して、別れを告げるのではなかろうか。


「清彦、交際を続けたいよ」


 二股の状態を続けたいという女性。精神科に入院すべきではないかと思ってしまった。


「秋絵にどんなことをいわれても、浮気されたのはれっきとした事実。交際中に他の男性とハグするような女性とは、二度と会うつもりはない」


「清彦・・・・・・」


「すぐに別れなければ、学校にいられなくなるぞ。高校生としては、それだけは避けたいんじゃないか」


 ちょっとした脅しをかけると、浮気女はついに観念する。


「わかった。清彦と交際終了するよ」

 

 懐に忍び込ませている、ボイスレコーダーにきっちりと録音。デマを流された場合は、こちらで対応しよう。


「電話、ラインは今後一切禁止。約束を破った場合は、ストーカーとして警察に通報することもあるから」


 順風満帆な別れ方なら、電話、ラインくらいは許していたかな。そのようなことを思いながら、浮気女のところからいなくなった。


 清彦はこれで、すべては片付いたと思っていた。その考えは間違っていたことを、のちのちに嫌になるほどわからされることになる。

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