第4話 浮気現場を目撃されたことを知らない女

 清彦のところに、秋絵が近づいてくる。昨日までは嬉しさもあったけど、今回は近づいてくるなと思った。


「清彦、おはよう」


 秋絵は浮気しているとは思えないほど、堂々とした立ち振る舞いをしている。男と会ったことに対する罪悪感は、一ミリも感じていないようだ。


 浮気女に対して、愛想笑いを浮かべる。眉間に皺が寄っているかもしれないけど、それについては気にしないことにした。


「秋絵、おはよう」


 他の男と不倫する女に、どのようにして鉄槌を下すか。清彦の脳内は、そのことで埋め尽くされていた。


「清彦、デートにいこうよ」


 浮気をしたのに、他の男性をデートに誘える。悪事がばれなければ、何をしてもいいと考えているようだ。


 清彦はちょっとだけ語気を強めた。


「いろいろな用事があるから、当分はパスしようかな」


 当分ではなく、二度とデートするつもりはなかった。浮気をするような女性は、生理的に受け付けなかった。


 秋絵は甘えるような声を出す。


「遅くても来週にはどこかにいきたいな。遊園地、映画館、コンサートなどのチケットを確保してあるんだ」


 デートの日程も決めていないのに、チケットの確保をする。お付き合いに関しては、とってもマメな女性だと思った。恋愛も同じようにしていたら、男性付き合いももっとよくなっていただろうな。

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