第76話 というか駆逐艦一隻で十分脅威だ
宇宙船で使う検知器には当然種類がある。
良いものが必要ならばそれなりの性能が必要であり、当然性能に比例して価格も上がっていく。
なので、検知器を求める人は用途によって購入する機器のランクを決める。
使い捨てする頻度が高いなら安価な物を、危険な場所であるなら高性能な物を用意する。
当然、不要な機能に費用をかける事はない。
一般的に宇宙を航行する人にとって、検知が必要なのは襲撃してくる不審船の検知だ。
その能力は、数隻から十数隻も検出できれば十分だ。10倍以上の船に対抗できるスーパー戦闘船なんてない以上、それ以上の数を検知すれば逃げるだけだ。
つまり、数百隻以上の船を検知する機能は、一般的な船には不要という事だ。
それを必要とするのは、同等の戦力に対抗する必要がある場合だ。
つまり軍隊という事だ。
スペーススーツの通信をチャプター号につなげる。
「ウィル。船のシールドを切れ」
【…はい】
オレの言う事を理解したウィルが返事をする。
前にも言ったが、シールドの反発力を探知して相手の位置を特定できるからだ。
もちろん、それは危険な行動だ。
前のケースよりも、今回はそれ以上に危険である。なぜなら、現在ウィル達の乗るチャプター号がいるのは、破壊され無数のデブリが漂う廃墟ステーションのすぐ近くだ。
さらにチャプター号がフリゲート艦としては商用船では平均だが、大型に属する。唯一の利点は外部装甲も船の大きさに合わせて厚い事位だ。
「船の外装の耐久に注意してくれ」
【はい。二人にもスペーススーツの気密をとらせます】
「それでいい。安心しろ。狙いはオレ達じゃない」
オレの言葉にヘックスがこちらを見る。
まあ、これはあくまでもオレの推測だ。というか、そもそも常識的に考えればわかる事だが、オレ達を数百隻の船を動員してまで追いかける必要性が無いのだ。
別に宇宙をまたにかける大海賊でもなければ、国家転覆を狙う悪の科学者というわけでもない。言っては何だが、ケチな小悪党(自称)だ。
対処するなら数隻の宇宙船で済む。というか駆逐艦一隻で十分脅威だ。
当たり前だが、宇宙船を動かすだけでも搭乗員の給料から燃料まで膨大な経費が掛かる。
ウサギを倒すにも全力を出す獅子というのは、戦力を見誤った未熟者という事だ。
【ワープアウト確認。船籍数不明。光学解析での推定では百から数百ほど】
「スキャンはするな。位置がばれる。検知機の回収は不要。そのまま放置だ。ワープアウトの検知は続けてくれ」
【はい】
艦隊のワープアウトに関しては、そこまで問題ではない。
ワープとワープの間に回復期間が必要になるのは、どんな船でも変わりはない。ましてや、船の質量が大きくなればなるほどワープに多くのエネルギーを必要とする。
ここは戦争中の星系だ。軍艦だからと言って際限なくワープできるわけではない。
消費したエネルギーを回復させる必要が出てくる。戦闘が予定されているなら、なおさらエネルギーの回復は、戦闘の勝敗を左右すると言っても過言ではない。
つまり、このまま一定時間エネルギーを回復させてワープしてどこかへ行ってくれるなら何の問題もない。
【検知許容量を超えたワープアウトを検知しました】
しかし、ウィルの通信が入る。どうやら事態は最悪の方向に動いたようだ。
ワープエネルギーが多いという事は、ワープの痕跡も大きいという事。
当然、広範囲で検知されやすいことを意味する。
ましてや、高性能な検知器を有する者達からすれば、それを見逃すなんてありえない。
何が言いたいか分かるだろう。
それを検知してやってくる同等の存在がいるのである。
つまり、ここが艦隊戦の舞台となったのである。
「おう。ジーザス」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます