助けに行くといえるほど上等な事ではない
第48話 オレの趣味ではない
シェイク号改め新生シェイク号に乗り込む。
まあ、機能の修理なので、船の中が見た目で分かるほど変わったわけではなかった。とりあえずダストボックの中は綺麗になっていた。
しかし、伊達や酔狂で「新生」と名乗ったわけではない。
振動を感じない!
最高だ!
これで、金欠の時にステーションでの宿泊代を節約できるからな。
そんなスキップしたくなる状況ではあるが(そういえば、スキップって何年振りだろう。今できるのか?)、今回はお客さんである少女のルーインが乗り込んでいるので、大人の態度からはしゃぐわけにもいかず、内心上機嫌に船に乗り込む。
一つだけ問題があった。残念なことに、ルーインはメイド服姿だ。
オレの趣味ではない。世間体の為に再度言うけどオレの趣味ではない。
そして、大事なのはメイド服は宇宙空間で活動できる装備ではないという事だ。
どこかの変態なら、それらの機能を付けたメイド服とか開発しているかもしれないが、少なくとも今ルーインが着ているメイド服には普通の服以上の機能はない。
そんなわけで、ルーインを新生シェイク号のブリッジに連れていく。
シェイク号は宇宙船だ。宇宙空間を移動する為の乗り物である。穴が一つ空いただけで船内の空気が消える可能性がある。あいにく
そういうわけで、ルーインにとって、一番安全な場所がブリッジというわけだ。
フリゲート級の小型宇宙船のブリッジだが、オレとヘックスに子供のルーインが乗れる程度のスペースは存在する。
「ハーン。目的の船の場所は分かったか?」
【現在位置はまだネ。でも、この星系で使ったゲートは分かったアルヨ。あとは足取りを追うだけ。すぐ分かるアルヨ】
「エンジン起動」
ハーンからの通信をブリッジ内に垂れ流しにしていたので、それを聞いたヘックスが新生シェイク号のエンジンを稼働させる。
ルーインと一緒につかまっていた子供があと二人。救出する事を目的とするヘックスからすれば、一刻も早く見つけなければならない相手だ。
「ワープエンジンへエネルギーを回します」
そんな中、サブ操縦席に座ったルーインが、コンソールを操作する。
「頼む」
その言葉に、何事もなく返事をするヘックス。
「ワープゲートの座標確認。軸合わせカウントお願いします」
「…5,4、3,2,1。ワープエンジン起動」
そしてスムーズに始まる新生シェイク号のワープ。
「この船を操縦したことあるんだっけ?ルーインちゃん」
「ワープ完了時間まで7分です。…いいえ。ですが基本操作は同じですから」
と、事も何気に言う少女のルーイン。
年齢は聞いてないけど10歳くらいかな?
前にも言ったけど、宇宙船操作の資格は自動車免許と同じ程度だ。つまり、誰でも学んでいれば操作できるのである。
もちろん、オレだって出来る。前に盗んだシャトルでOSSに逃げる時は、手間取ったりもしたけど、ちゃんと操作していた。
まあ、いつもは他の事をやっているから自動機能にまかせているんだけどね。
「開拓民の子だ。基本的にある程度のことは自分でできる」
手慣れた操作に驚いているとヘックスが教えてくれる。
とりあえず、ブリッジに臨時の座席を設置するとするか。
…自分が座るためにね。
ゲートを抜けた別星系へ移動した為に、リアルタイムでのローカル通信はできなくなったが、ハーンの船との交信は続いており、相手の足取りから目的の船の場所を特定する事が出来た。
船の性能から、大量の物資を安定して運ぶ事に重点を置いた商業用の船に比べて、戦闘艇の方が船体が小さくワープにかかるエネルギーコストも回復時間も少なくて済む。
さらに、向こうは人身売買という特級の違法行為をしている。
セキュリティレベルの高い星系を通り、そこの治安維持組織の臨検に引っかかるようなリスクを負えない以上、遠回りでも治安の悪いLSSを移動するしかない。
おかげで、目的の船を捕捉する事ができた。
丁度その船はワープ後のエネルギー回復中らしい。
近くに二隻ほど別の船が泊っている。とはいえ、取引という雰囲気でもない。まあ、ゲートからゲートへの移動途中の安全地帯は限定される。たまたま同じ場所になるケースは珍しい事ではない。
今回は不幸な出来事になってしまったと言えるけどな。
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