第29話 ほっとけ

宇宙海賊にコネを持とうと売り込みをしたら、どう見ても初対面の無法者に払うわけないような高額報酬の仕事を回された。

一応、名目はデータ回収用のハッカーを護衛するのが仕事内容らしい。

これ、絶対裏があるだろう。


OSSの指定された場所へ移動する。


当たり前だが秘密基地での回収作業だ。秘密基地である以上、その場所の情報は秘密だ。ましてや、回収するほどの価値のあるデータがあるならなおさら、第三者に先を越されるわけにもいかない。

そんなわけで、OSSの適当な場所で合流するわけだ。


そんな、仕事の頼れる仲間がこの二人である。


「ベッキーだ」

「アタシは、リッカ。よろしくね。おっちゃん」


デコボココンビである。


ベッキーは高身長のガッチリした肉体派。袖のない肩からむき出しの体を守るバトルスーツを着ており、その背中には大きなバックパックが装備されている。さらに、左腕はサイバーアームだ。浅黒い肌に、長く黒いウェーブの髪をひとまとめにして、肌を露出している右腕とか、首筋にはい刺青が彫り込まれている。


そして、リッカは…小柄だ。ベッキーの肩くらいまでしかない。そして若い。子供…ではないと思うし、別に子供でも仕事をしてくれればいいや。簡素なスーツを着ているが、お世辞にも防御力に期待できない。腰には一応ブラスターピストルをつるしているが、貫禄はほぼない。


とりあえず、戦闘能力の低そうなリッカに声をかける。

何よりも大事な、護衛対象の確認だ。


「君がハッカー?」

「ハッカーは私だ」


第一印象から問いかけると、横から不機嫌そうな声でベッキーが答える。

…え?だって君なんかものすごい武闘派な外見していない?ハッカーならなんでゴツイバトルスーツ着て、大型バックパックを背負っているの?


「あの背中のが電子管理AIだ」


意外そうにベッキーを見るオレに、ヘックスが教えてくれる。背中のアレはハッキング用の装置らしい。専用のAIが積まれて電子計算をしてくれるのだそうだ。

問題は、高性能になればなるほど大きな容量が必要となり、大きくなればなるほど重量も増す。その重量を持ち運ぶためにパワーアシスト付きのスーツを着ているのだそうだ。


なるほど、戦闘用ではなくてもスーツが必要になるんだな。

でも、それだと、バトルスーツすら来ていないこっちの人はなに?見習い?


「じゃあ、アンタは?」

「アタシ?アタシはパイロットよ。でも、大丈夫。自分の身くらいは守れるから」


そういうと、腰のホルスターからブラスター銃を抜いて手の中でくるくる回して玩ぶ。その動きは滑らかで手慣れたものだ。


よく見れば、小型ではあるがブラスター銃のグリップや、持った時のバランスなどを、自分に合わせてカスタマイズした形跡が見える。


無法地帯は若い女性が生きるのは難しい。

そんな中で、生き延びているという事は、ある程度の技量が必要になるだろう。


…技量?

再度、リッカの装備を上から下まで見る。特にサイバネスで強化しているようには見えない。


「本当か?」

「おっちゃんには、それを言われたくないな」


リッカにそう指摘されて、改めて自分を見る。


前にも言ったが、一般のノーマルスーツに背中の救命バック。腰に剣一本である。

一般人を名乗れそうなほど戦闘能力とは無縁の姿だ。


「ほっとけ」

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