第21話 あ~疲れた
あの後も、何度か襲撃を受けた。
とはいえ、壁を切り裂くという
「ぜぇ。はぁ…」
さすがに疲れた足を引きずるように、人気のない暗い倉庫に隠された船に飛び乗ると、急いでハッチを閉める。
後ろでは、まだブラスターの発射音が聞こえるが、乗り込んでしまえばこっちものだ。
「よし。全員乗ったぞ」
【よし!出るぞ!】
オレがハッチを閉めたのを確認してヘックスが通信機に連絡。通信機からはとっつあんの明るい事が返ってきた。
同時に、軽い振動と共に船が動く。
船に乗ってしまえば、そこから先は、簡単だった。
とっつぁんの用意した秘密ドックの宇宙船でステーションの外壁に勝手に出口を作って、勝手に出航する。
出航許可?ここはOSSだぜぇ(ちょっとハイテンション)
とっつぁんの突入時の爆発や突っ込んだ回収船を警戒していた敵艦とは、離れた場所だ。
内部の状況にかかりきりだったのか、その動きは鈍く。ろくな妨害もなく船はワープしてステーションから脱出した。
そのまま、組合側のステーションに帰るのかと思ったら、そうではなく、OSS星系の別の場所へ移動する。
そこでは、4隻の駆逐艦が待機しており、オットー達はその一つに乗船する。
よく見るとその内2隻は共和国の正式駆逐艦である。
外装から船籍表示などは消されているが、大破した船をつぎはぎして作ったバルク船の一応駆逐艦的な船とは、明らかに違う。
「言っただろ。準備はしていたのさ」
僚艦が正規の軍艦であることに気が付いたオレの表情を見て、ガンツのとっつぁんが、肩をたたいて教えてくれる。
つまり、オットー組合長はすでに共和国と話をつけており、その協力を(非公式に)取り付けているという事だ。
「不幸にも抗争に巻き込まれた共和国民(組合長)達を助けるために、救援に来た共和国軍(所属不詳)」という形で準備していたのだ。
そのまま4隻の駆逐艦で組合のステーションに移動。
ステーションを襲っている敵のほとんどはフリゲート船だ。一応戦闘に特化した重戦闘フリゲート艦や駆逐艦もあるが、それらもバルク船の急造艦艇ばかりだ。
ステーションの防衛や迎撃能力で拮抗していた戦況は、突如現れた
駆逐艦から無人艦載機が飛び立ち、駆逐艦の主砲がフリゲート艦に向かって撃たれると、期を見るに敏な無法者達は次々とワープで戦場から離脱していく。
とりあえず、こちらの勝利で安全が確保されたという事だろう。
近くに置かれた荷物に腰を掛けて、ポケットの中からとっつぁんに前金として渡されたスキットルを取り出して一口飲み込む。
仕事は完遂したんだ。もう返せとは言われないだろう。
なかなか、いい酒が入っているようだ。舌の上で堪能して飲み込む。
二口目に口をつけると、バトルスーツのヘルメットを脱いだヘックスが、こっちを見て手を伸ばした。
その視線の先はオレの手にあるスキットルだ。
…まあ、同じ仕事を完遂した仲間だしな。
ヘックスにスキットルを放ると、それを受け取り豪快に傾ける。
「ぷはぁ!」
そして、美味そうに息を吐いた。ヘックスにとっても危険な仕事だったのだろう。その点に関しては同意見だ。
ヘックスをまねて、オレも手を伸ばす。そもそもそれはオレのだ。返してもらわなきゃ。
それを見てヘックスはスキットルに蓋をしてこちらに投げ返す。
受け取ってスキットルに口をつけようとして気が付いた。
空だった。
「ジーザス」
「ハハ」
オレの言葉に笑うヘックス。
空のスキットルを投げつけると、ヘックスは手に持ったバケツ型ヘルメットでそれをハジく。そして、笑みを浮かべたままヘルメットをかぶりなおして、ガンツのとっつぁんの方へ行ってしまった。
まあ、あいつの仕事は用心棒だしな。
そんなわけで、一人だけ取り残される。
オレの仕事は父つぁんの手伝いで、その仕事はもう終わった。
これ以上することもない。する元気もない。こう見えてもう39歳だ。若くないのである。
「あ~疲れた…」
そう言って、座り込んだ荷物の上にゴロンと横になった。
大事なことなのでもう一度言おう。もう、若くないのである。
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