第15閑話 故買屋の手にした切り札
ガンツは事務所を出て、秘密の裏道を歩きながら、自分の幸運をかみしめる。
この星系は、今まさに一世一代の大博打の最中だった。
長年続いた無法状態は先細りしていた。
勢力が固定化して閉塞している。稼ぎが気目減りすれば、海賊たちは早々にここから離れるだろう。
そうなれば、ここに半ば根を下ろした商売人達の未来はない。細々と商売を続けてやがて衰退するか。手ごろなまでに弱体化した所で、残った無法者達ごと共和国の点数稼ぎに討伐されるだろう。
それを危惧したオットー達は、秘密裏に惑星の資源開拓を進めていた。自分たちで資源採掘の初期投資を賄えば、共和国の重い腰を上げる事が出来るかもしれないと考えたのだ。
最悪でも、小さな産業として商売を維持する事が出来る。
それは、計画通りに進んだが、思いもよらないことが起こった。
銀河帝国の樹立と戦争だ。
お世辞にも採掘量は豊富とは言えなかった。ほかのメジャーな産地とは比べるのもおこがましい程度の埋蔵量だ。
だが、帝国独立による生産地の減少と、開戦による需要の拡大。
希少資源の新規産出地として、初期投資によるコスト削減を提示すれば、共和国から譲歩を引き出すに十分な要素だった。
そして、開戦により軍事資源産出のカードが高騰したと判断したオットー達は、博打に出たのだ。
だが、それゆえに準備万端とはいかなかった。
敵対する勢力からの妨害は苛烈なものだった。
それをオットー達は、何とか跳ね返していた。共和国の協力が来るまで耐えるべく、少なくない被害を出しながら、それらに抗った。
ガンツも昔のツテを使って、オットー達に手を貸した
あと少しなんだ。
最後の最後で後手に回った。
オットーの計画は危うい状況だ。失敗すれば、地位どころか家族の命すら失うだろう。
そんな時に、ソードマスターから連絡があった。
半分引退して道楽で残していたアドレスに連絡があった時には我が目を疑った。
その名前でなければ無視していただろう。
そして、本人だとわかれば。もう、迷う事はなかった。引き込むためにできる限りの手を打った。
一本の剣で、ブラスターを切る
十数年前、この男はOSSの話題を一人でかっさらっていた。
閉鎖された隔壁を切り裂いて仲間を助けた逸話。
共和国軍艦の艦載機ドックに一人で切り込み制圧した武勇伝。
最新バトルスーツとの1対1の決闘。
たった一人で、大物同士の抗争を終わらせた事だってあった。
力こそすべての無法者達の中で、誰にも真似できない力の象徴。
年甲斐もなかったが、ファンだった。
そんな男が、仲間の裏切りで捕まったと聞いた時は、店を開けられなかったほどだった。
オットーに話をしたが、当時を知らない奴には半信半疑のようだった。
この状況で新参者の参入なんて、警戒して当然だ。
自分自身で抱え込みたかったが、強引に引き入れたせいで警戒されてしまったようだ。
ハヤりすぎたと反省する。
そして、今回の事態になった。
十分注意した今回の手打ち式だったが、案の定罠だった。オットー達は、敵の縄張りに閉じ込められてしまった。
こちらの勢力は本拠地であるステーションを守る事で手いっぱいだ。敵の本拠地に乗り込んでオットーを救出するだけの力は残っていない。
助けに行きたいが、年老いた体では意味もない。
用心棒のヘックスは手練れだ。
だが、それでも足りない。
規格外の奴がいる。分のない賭けでも勝負できる切り札。
店で起きた騒動に顔を上げると、彼がいた。
躊躇う理由はなかった。
「悪いが力を貸してくれソードマスター」
ガンツ・ラバンニエの人生すべてを賭けるに値する
後は、
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