第6話 引っ越し


 結局へべれけになったお菊さん(後から聞いた)を二階に連れて行って寝かせると自分の部屋にいって眠りにつく。


“べべべべべべべ”

「あっ、きた」

「師匠!先に行くってなんですか?昨日はあれから大変だったんっすから!」

 梅吉が入ってくるなり怒鳴り散らかす。

「あぁ、頭に響くからもうちょっと静かに」

「なんで二日酔いなんっすか!」

 ソファーで横になってるお菊さんに頭を抱える梅吉。

「梅吉達も大変だったみたいだねー」

「そうなんすよ!荷造りして台車に詰め込んでライト付かないから一日夜を過ごして来たんすから!」

 そりゃ大変なこって、

「あんちゃん!手伝えよ!」

「そうですよ!」

「わーてるって」

 松太と竹雄に呼ばれて渋々いく梅吉。

 私?私は手伝わないよ?疲れるもん。

「二階は空いてる部屋使ってねー」

「「「はーい」」」

 荷物を持って二階に上がって行く三人をみる。お菊さんはそれを見ながら笑っていた。


「やっと荷物運び終わったっす」

「コーラでもどうぞ」

「ング、喉が焼けるっす!」

「甘い!美味しい!」

「ほんとパチパチいって楽しいですね」

 三人とも気に入ってくれたみたいで良かった。


「お師匠はいいご身分ですねぇ!」

「怒らない怒らない」

 梅吉はだいぶ御立腹のようだ。

「ジャムパン食べる?」

「食べる!」

 ジャムパンを渡すと食べながら文句を言っている。

 器用なことをするもんだな。


「私にもパンを頂戴な」

「何パンがいいかな?とりあえず色々出しますね」

 惣菜パンから甘いパンまで出してみる。

 一応、狐ということでおいなりさんもだしてみるが、

「おいなりさんもあるのね、パンは色々あるから迷うわぁ、じゃあこれに“シュバッ”」

 梅吉がそれを食べてウメェと叫んでいる。

「む。ならこれ“シュバッ”」

 今度は松太がそれを食べ始める。

「お前たち!何すんだい!」

「俺たち昨日何も食べてないんすよ!師匠が出てったから」

 食べ物の恨みは恐ろしいな。

 ん?竹雄は?あ、パンを好きなだけ自分のところに寄せて食べていた。

「悪かったよ、んじゃおいなりさんでも頂こうかね!」

 パックに入ったおいなりさんを一口食べ、

「うっま!美味い!初めてこんなおいなりさんを食べたよ」

「お口にあったようで良かった」

 やはりここは食に乏しいからだろうな。ここは地球から人がいなくなってから何年経ってるんだろう?

 

「人間って地球にいるんですか?」

「いるわよ?国を作ってるわね」

「えぇー!本当?」

「嘘言ってどうするのよ。今はもう日本はないわよ?ユーラシア大陸と合体してるから」

「なっ!じゃあここは?」

「旧日本って何処かしら」

 まぁ、小さい島国だから天変地異で大陸移動もあるわな。

「あとはオーストラリアがなくなって北と南のアメリカ大陸が繋がったかな」

「なんでそんなこと知ってるんですか?」

「何百年も生きてればそれだけ情報もはいってくるのよ」


 うわぁ、世界地図変わってるじゃない!

「それで人間のいる国は?」

「ユーラシア大陸のどっかにあるらしいわよ」

 曖昧ぃー、そこ知りたかった。


「でもここの領地はいまのところ雪ちゃんの領地になってるわよ?」


「へ?」

 あ、黒ライオンの領地だったからか。


「知能の高い連中は挨拶に来るんじゃないかしら」

「げ。そんなにいるんですか?」

「そこまではいないわよ」


「私の領地って、どれくらいですか?」

「ここは旧愛知県だからそれくらいの大きさはあるわよ?」

「ひろっ!私の領地?」

「そ、守らないとね」

 

「一応結界は作ってあるからそう簡単にははいってこれないけどね」

「お菊さんがつくったんですか?」

「そうよ、キングが張れって言うから」

「良かった」

「でも油断はダメよ?キングの力を使いこなせるようになりなさい」

「は、はい」

「あんた達も助けるのよ?」

「あったりまえっす」

「僕も頑張るよ!」

「そりゃやるに決まってます」

 松竹梅兄弟は頼もしいことを言ってくれる。パンパンに膨らんだお腹をさすりながら言っても気合いは入らないけどね。


「梅吉!部屋から本を持ってきな!」

「言うと思ってここに置いてありますよ」

「気が効くじゃないか!」

「それは?」

「世界のお酒大全集」

 あ、この人ダメだ。

「私これ飲んでみたかったのよね!」

「はいはい、これですね」

「きゃー!美味しいいなりをつまみに一杯!たまんないわぁ」

「うちのお師匠がすんません」

「いいのよ、頑張ってきたわね」

 梅吉達も残念なものを見る目でお菊さんをみている。

「おいちー!」

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