第5話 狐
“べべべべべべべ”
「雪ちゃーん!」
「お。いいところに!」
「さいならー」
「待て!」
影を操りバイクを止める。
「なにこれ!なに!なに!」
「梅吉!屋上片付けてよ!」
「え?えぇー?登るのも大変なのに?」
「いいから早く!虫が湧くでしょ?」
「なにがいるの!!虫が湧くって!」
「リザードマンの死体」
「いやダァー!」
「パンあげるから」
「い、いやだー」
お、いいかもしれないな。
「アイスもつけちゃう」
「アイス?本当に?」
「本当本当!」
チョロいな!
私はソファーに座って雑誌を読んでいる。
「ふはぁー、疲れたよ」
「まぁ座りたまえ」
「あ、はい、てかキングは?」
「呼んだか?」
私の影から後ろに出てくるキング。
「え?キングが影に?ってことは?」
「そう。私が次のキングよ」
「ええー!」
私はことのあらましを梅吉に伝える。
「そりゃ大変だったっすね。でもなにもお嬢にキングの紋章を譲らなくても」
「それだけ切羽詰まってたのよ」
「それにしてもここも変わりましたね」
リュックから色々出してたからね。
二階に個室を作ってそこで寝泊まりするようにして、一階はリビングにしている。
「梅吉達も越してきたら?」
「うーん、あいつらと話し合わないとだめですね」
「そっか、竹雄と松太でしょ?」
「あと一人いるっす。お師匠さんが」
「お師匠さんがいるの?ならダメでしょ?」
初めて聞いたわお師匠さんがいるの。
「さぁ?新しもの好きなんでくるかもしれないっすね」
えぇー、松竹梅兄弟ならいいけど、それのお師匠ってどんなのよ?
「まぁ、上のリザードマンは下に落として掃除しといたんで虫が湧くことはないっすよ」
「下に落としたリザードマンは?」
「スライムが処理してくれるっす」
「あ、そうなんだ。スライムっているのね」
そんなのもいるんだなぁ。
「便所に一匹は必需品っすよ」
「ここも?」
「いるっすよ」
はぁ。そういうものだと割り切らないとな。
「電気はないけど水は出るのはなんで?」
「あぁ、お師匠さんが直したって言ってましたよ。ここら辺だけですけどね。トイレも水洗ですけど浄化槽?にスライムがいるっす」
「へぇ、お師匠さんは凄い人なんだね」
水を出すにはどうしてるんだろ?勝手に使って怒られないよね?
「んじゃ、俺は家に帰って話してくるっす」
「無理にとは言わないからね」
「了解っす」
梅吉はまたバイクに乗り帰って行った。
「二階の掃除でもしようかな」
「ならワシは寝とくぞ」
「むー。しょうがないなぁ」
二階の掃除をしてベッドやソファーを置いて行く。もともとが賃貸物件みたいなのでやりやすい方だと思う。
「おこんばんわー」
「あ、こんばんわ」
こんな夜になんだろ?
「梅吉に聞いて来ちゃった」
とても綺麗な女の人だが一つだけ尻尾がいっぱいある。
「ど、どうぞ」
「あら、ありがとう」
「紅茶でいいですか?」
「なんでもいいですよー」
ペットボトルの紅茶をティーカップに入れて出す。
「あら美味しい!」
「なら良かった」
「なんでもキングが紋章を託したとか?」
「呼んだか?」
「あらキング、久しぶりね」
「あぁ、狐のか、久しぶりだな」
二人とも知り合いだったのか。
「雪、コイツは酒が好きだから酒をやれ」
「はぁい、お父さんがよく飲んでたお酒」
「あら、綺麗な瓶に入ってるわね」
ロックグラスも取り出して渡すと“トクトク”とグラスに入れて飲んでいる。
「うっま!これ美味しいわぁ、幸せ」
「あはは、お父さんもそれ飲んで幸せだぁって言ってました」
「そりゃこんなものがあれば幸せよ」
「本当は氷を入れて飲むんですけど」
「あら、それ」
氷をだしてのんでいる。氷ってだせるんだ。
「あぁ、美味いわねー」
「あ、梅吉達は?」
「明日あたり来るんじゃないかね?」
「今日は二階に部屋を作ったんでそこで寝てください」
「あら、ありがとうね。ねぇ、これってもう二、三本あるかしら?」
「ありますよ、どうぞ」
「きゃー!ここにきてよかったわぁ!」
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