第4話 黒


「キングは大丈夫?」

「あぁ、大丈夫じゃ」

「それならちゃんと食べなさい!」

 あれからキングはあまり食べない。

 やはりオークキングとの戦いで怪我を負ったのかもしれない。

「おーい!」

“べべべべべべべ”

「また来たのね」

「オークの革は丈夫だからちゃんと作って来たぜ」

「へぇ、器用なもんね」

「僕が作ったんだ」

「松太は手先が器用なんだよ」

 私に革鎧を着せようとするが、臭い!

「臭っ!消臭剤!」

“シュッシュッ”

「何してるの?」

「臭いから匂いをとってるの」

 なんとも据えた匂いがする。

「よし、匂いも消えたし着てみるね」

 

 手伝ってもらったらやっと着れた。若干のサイズ調整が必要だが、ありっちゃありだな!

「ありがとう!」

 まあ、これ着るときは無いと思うし。

「どういたしまして」

「これで大丈夫だろ」

「へへ、頑張ったもん」

 三兄弟は照れている。なにが大丈夫なのかは知らないけど。


 三兄弟が帰ってからキングにブラシをかける。

「どう?気持ちいい?」

「あぁ、気持ちいいよ」

「あはは、お爺ちゃんみたいだね」

「もう年寄りさ」

 私が生きてる間は死んでほしく無い。

 それだけキングは優しい。

「長生きしてね」

「そりゃ無理な話だ」

 割り込んで入ってきたのはリザードマン?

「キングが寝込んでるってのは本当だったみたいだな」

 私はリュックに手をかけて機関銃を思い浮かべるが出てこない。

 チッ!こんなときに!

「キング、そろそろお終いにしようや!」

「乗れ!」

「はい!」

 キングの背に乗るとビルをすごいスピードで駆け上がって行き屋上につくと倒れてしまった。

「雪、額に頭をつけろ」

「は、はい」



 ここは何処?

 黒いお城みたい。

「雪、ここでお前に託そう。死なぬようにな!」

「キング!ここは何処なの?私はまだキングと一緒に居たい!」

「時間がない。この王冠は代々受け継がれて行くものだ」

「そんなのいらないよ」

「受け取れ!生き残るためにな!」

「う、ウッ、うん」

「強くなれ」

「うん」


 光が差し込むと屋上に戻っていた。リュックからは機関銃がでている。

 私には使い方がわからないがどうにかセットしてみる。引鉄を引いてみると“ダダ“と弾が出てくるのでこれでいい。

 リザードマン達が扉を開けるその瞬間に、

“ダダダダダダダダダダダダダダダ”

 機関銃の発射音がしてリザードマンが何体か倒れている。

 “カチ”“カチカチ”引鉄を引いても弾が出ない!

 一際大きなリザードマンが出てきて後ろのキングに目を向ける。

「アーハッハッハッ!キングもここまでだとはな!これでここの領地は俺様のものだ!」

 拳を握ると熱くなっているのがわかる。手の甲に王冠のマークが付いている。

「私は」

 頭の中にいろんな情報が入ってくる。

「私は」

 キングがくれたこの力のことが。

「怒ってるんだからね!!!」

 私を包むのは黒い力の奔流。私の髪は黒くなり肌も浅黒くなっている。光っているのは右手の甲にある王冠の紋様。

「な、なぜ?人間なんかに」

 動ける!懐に潜り込んで腹をぶん殴るとくの字になるがそれだけじゃ足らない!

「おもいしれ!キングの力を!」

 私は無我夢中で殴り続ける。

『ウガガガガガガゴガガ』

“ドサッ”

 リザードマンだったものがそこにはあった。

「他に私たちに楯突くやつは?」

 リザードマン達は逃げ帰って行った。

「キング!」

「…よくやった、これで安心だ」

「やだよ!キングには私が死ぬまでいて欲しいの!」

「それでは忠誠を誓おう、我、キングは雪に忠誠を誓う」

「こ、こんなの」

「我は雪の影になる。いつでも呼ぶといい」

 キングは溶けて影に入ってしまった。


 キングから受け継いだのは黒の力、黒とは白の対極にあり、影であり闇である。


「キング、モフっていい」

「いいぞ、主」

「モフモフ」

 キングは私の影になった。私の髪は半分が白く半分が黒くなってしまったが可愛いっしょ?肌は白いままだし、似合うと思う。


 キングとも一緒にいられるんだから最高よね。影だけど。

 リュックからパンを出して食べる。

「うん美味しい」

 

 屋上のリザードマンは梅吉達に片付けてもらおっと。

 

 リュックからベッドにソファーにテーブルを出して部屋にする。


 私は雪、キングといつも一緒。


 モンスターなんて片っ端からやっつけてやる!

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