第3話 松竹梅


 “べべべべべべべ”

「おい押すなよ」

「押してないよぅ!」

「いいじゃないですか!」

「おまえか!」


 外から聞こえてくる音で梅吉達だと分かった。

“キイィィィィ”


「よう雪!また来たぜ!」

「は、、初めまして松太です」

「初めましてお嬢さん、竹雄です」


 あぁ、兄弟って言ってたなぁ。松太は可愛いボブカットで一番小さくて手が長い。竹雄はイケメンで耳が長くて髪も長く後ろで纏めている。

「初めまして、白井雪です」

「可愛いねぇ、この子がパンをくれたの?」

「僕パン大好き!」


「ああ、黒ライオン、ごめんな、弟達がどうしてもって聞かなくてさ」

「あぁ、いいさ」

 あら、キングも許してくれてるようだし。パンでも出そうかな。

「はい、チョココロネとメロンパン」

「「ありがとー」」

「あーずるいぞ」

「キングも食べる?」

「ワシは食パン三斤で」

「お、おれはジャムパン」

「はいはい」


 食パン三斤とジャムパンを出してキング達に渡すとキングは一口で食べてしまう。これじゃ足りないんじゃないかな?


「歳取ると食が細くていかんな」

「そういうことね」

 もうお爺ちゃんライオンなんだね、洗ってる時も肋とかが浮いてたもんね。


 この子達も孫みたいなもんなのかな?

 松太は指についたチョコを舐めているし、竹雄はゆっくり噛み締めて食べている。


「雪姉ちゃんはここにずっといるの?」

 松太が聞いてくる。

「んー、たぶんキングが良ければ」

「勝手にせい」

「だって!ここにいるよ、あ、飴ちゃん食べる?」

「「「食べる」」」


「硬った」

「舐めて食べるものよ?」

「そうなんだ」

「あまーい」

 飴は大好評だ。次は何味にするか決めている。可愛い弟分ができたみたいだ。

 キングはもう寝ているし、松太と竹雄は飴に夢中だ。

「梅吉達はどこから来てるの?」

「ん?山の方だな」


 山の方か、虫とかいるんだろうなぁ。

「今日はここにくるのとオークを狩ろうと思ってな!」

「オークって豚のオーク?」

 ゲームでよく見るやつ?あんなのがいるんだ。

「おう!肉の備蓄が少なくなってきたからな」


 あんなのがいるんだ。私なんかすぐに食べられちゃうよ。

「あいつら頭悪いからすぐ捕まるんだよな」

「でも力は強いよね」

「ですよ、僕はパンで十分ですけど」

 竹雄はパンが気に入ったみたいだ。


「ほら行くぞ、あいつら夜行性だからさっさとしないとな」

「「あーい」」

 と言って三人とも出て行った。

「大丈夫かな?」

「なーに、オークごときに負ける奴らじゃない」

「起きてたの?」


 キングが起き上がり、私を背に乗せると、

「見に行くか」

「うん」

「ちゃんと捕まってろよ」

「はい」

 キングは速くてビルの間をぴょんぴょんと飛び回る。一番高そうなビルの上に着くと。


「ここからなら見えるだろ」

 リュックから双眼鏡を取り出して見てみると、梅吉達は寝起きのオークを一撃で仕留めている。三匹のオークはすぐにやられて動かなくなった。一人一匹か、すごく強かったな。

 あれ?後ろの方からオークのおっきいのが来てる。


「やばいな、オークキングだ」

「速く逃げて!」

「間に合わん、ワシが行く」

「私も」

「危ないぞ」

「でも見てられない」


 キングの背に乗ってオークキングのところまで行くと私は降りて梅吉達の方に行くとリュックにオークを詰める。

「なんできたんだ」

「いいから逃げるよ!」

「あい!」

「こっちのオークも入れたら脱出よ」



「よう、キング!年老いたな」

「なにを小童がほざいとるか」

 オークキングは斧を振り上げるとキング目掛けて振り下ろす。

「ワシに勝とうなんてまだまだ早いわ」

 喉元に噛みついて離さないキングはそのままオークキングを倒してしまった。

「まぁ、こんなもんじゃ」

「まだよ!」

 オークキングの最後の力でキングは蹴られてビルに激突する。

「キング!」

「あいたたた、歳には勝てんのぉ」

「何処怪我したの?大丈夫?」

「あぁ、ありがとうな」

 キングはふらつきながらもしっかり四本の足で立っている。リュックにオークキングを入れてそこから立ち去る。

 

 ビルに帰り着く、

「大丈夫なの?」

「休んでれば大丈夫だ」

「ごめん、俺が油断してた」

「僕達のせいで」

「お前たちのせいじゃない。ワシが少しヘマをしただけだ」

 キングはいつもの場所でゆっくりと息をしている。オークキングがあんなにおっきいなんて。それにしてもお通夜みたいな感じね。

「キングも大丈夫って言ってるしオークを持って帰るんでしょ?」

「う、うん」

「じゃあ明るいうちに帰りなさいよ」

「そ、そうだな。オーク三頭だからなぁ」


「まずここで解体しないと」

 外でオークの解体をする三人について行く。血抜きして皮を剥いで肉の塊にして行く。

「ここまでくると美味しそうに見えるわね?」

「美味いよ!」


「オークステーキが一番美味しいよ」

 あはは、みんな涎垂らしてるよ。

「なんなら今作ってやるよ」

「いまはいいや、また今度で」

「そっか。今度持ってくるな!」

「わかった」


 皮は舐めして防具にしたりするらしい牙も武器にするなんて捨てるとこ無いわね。

「雪の防具を作ってやるからな」

「そうだね!」

「いいよぉ、私戦えないもん」

「んじゃ訓練だな」


「えーやだよー」

 梅吉達はやる気満々だ。

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