第3話 きれいきれいしましょう(はみがき)

「イルカさんかわいかったですねぇ」


「んー」//バンザイポーズで伸びをするヒロイン


「んー、今日も満足です」


「ご主人さまもですか?」


「それはよかったです」


「それじゃあ寝ましょうです!」


「テレビ消して」


//主人公が立ち上がる


「……どこ行くんですか?」


//ヒロインが主人公の服の裾を掴む


「おふとんじゃないです」


「はみがき、してませんよね?」


「お手洗いも行ってないです」


「ねむねむ?」


「もうちょっとですよ! がんばりましょうです」


「あ、そういうことですか?」


「しかたないですねえ」


//ヒロインが主人公と腕を組んでくる

//ヒロインが背伸び。主人公の耳元で囁く


「こーしてほしいんですね」//笑いながら


「まったく、ご主人さまはどうしようもないご主人さまです」


「でもいいですよ?」


「ほら、いっしょに行きましょうです」


//SE フローリングを歩く音


「いち、に」//慎重に


「いっち、にっ」//テンポよく


「いっちにっいっちにっ」//楽しくなってきた


「わっふわっふ、いっちにっ」


「さーん、し! はい、冷蔵庫に寄り道です!」


//ヒロインが冷蔵庫から牛乳を出す。コップに注ぐ(二人分)


「ぎゅーにゅ、ぎゅーにゅ」


「はい、どうぞです」


//いっしょに飲む


「……んく、……んく、」


「ぷはーっ」


「牛乳はいいですねえ」


「ご主人さまもいい飲みっぷりです」


「コップ、洗ってくれるんですか?」


「ありがとうございます」


//SE 水の音。主人公がコップを洗う


「じゃあわたしはうしろから……」//声が後ろから近づいてくる


//SE 衣擦れの音


「くっついてますね」


「んぅ~」


//ヒロインが主人公の背中にほおずりしてくる

//SE 水の音止まる


「んぅ~」


「…………すぅ、くぅ……」//寝てしまう


「わふぅ………………はっ」


「き、きれいに洗えましたかっ?」//照れ隠しの早口


「えらいえらいですっ……」


//ヒロインが主人公の左に移動する


「じゃあ次ははみがきですっ」


//洗面所に移動


//コップに歯ブラシが二本

//SE ヒロインが一本を手に取る。もう一本がからんと音を立てる


//SE 水を出す。歯ブラシを濡らす。はみがき粉もつける


「はい、ご主人さまのです」


//ヒロインがもう一本を取る

//SE 持ち手がコップのふちに当たって音を立てる


//SE 歯ブラシを濡らす。はみがき粉もつける


「こっちはわたしの」


//SE 水を止める


「しゃらしゃらしゃら……」


「しゅくしゅくしゅく……」


「しゃらしゃ」


「ひょーひへはごひゅひんはは」


「ん……」


//SE 水を出す


「ごろごろ……ぺっ」


//SE 水を止める


「そういえばご主人さまって」


「は、みがくとき、空いてる左手、こう腰に当ててますよね」


「いえ、だからどうってことは……ないんですけど」


//ヒロインが主人公と腕を組む


「なるほどなるほど」


「誘ってたんですね! 気づきませんでした」//さきほどまでより距離近い


「しゃらしゃらー」


「しゅくしゅくー」


「しゃらしゃらー」


「しゅくしゅくー」


「しゃらしゃらしゃらー」


//SE 水を出す


「ごろごろー」


「ぺっ」


「ごろごろごろー」


「ぺっ」


//SE 水を止める


「ふぅ……」


「おわりましたっ」


//ヒロインが歯を見せようと、顔を近づけてくる


「どーですか?」//声だんだんと大きく


「ばっちりですよねっ」


「奥のひょーもできてますよねっ」//口の奥を見せながら


「完ぺきですっ」


「ご主人さまのも見ましょうか?」//ヒロインが背伸びしながら


「どれどれー?」//下から声が近づいてくる感じ


「わぅ……っ」//主人公がおでこを手で押し返す。声が遠ざかる


「うう、いいじゃないですか見せてくれてもっ」


「いいです」


「ご主人さまなんて虫歯になって、歯医者さんでしゅがーってしょごーってぎゅぎゃぎゃぎゃぎゃーって削られてしまえばいいんですっ」


「――ベッドに行きましょうですっ」


//ヒロインが主人公と腕組み


「……ぎゅい――んっ」//いたずらっぽく。歯医者の真似を続けながら歩き始める


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