第84話 青空は続く

 怨害の事件を解決し、家に戻るとミナモさんがいた。そしてボロボロの制服を見られてしまった。


ミナモ

「鉄也、また無茶したでしょ」


鉄也

「いやぁ……僕は無茶なんて……」


ミナモ

「言い訳しないの」


鉄也

「ごめんなさい……」


ミナモ

「まったく……」


 ミナモさんは僕の左薬指に紅い宝石のついた指輪をはめた。


鉄也

「ミナモさん、これは?」


ミナモ

「『紅玉紅雫こうぎょくべにしずく』って名前のお守りらしいわ。カッパ姿の気持ち悪い男から貰ったモノなんだけど……これを持っていると不思議と大怪我してもすぐに治るのよ……。だからきっと鉄也を護ってくれると思って」


鉄也

「カッパ? あの雨具の? カッパを着た人?」


ミナモ

「ん? 違うわよ。未確認生物の方」


鉄也

「み、未確認生物っ!?」


 なんでミナモさん未確認生物と関わりがあるのっ!? そんな不思議な事って起きるもんだっけっ!?


ミナモ

「まぁ、あのカッパ……私にとっては悪い人じゃなかったし、不思議と怪我の治りも早いからずっと持っていたけど……最近、鉄也が危なっかしいから……持っていて」


鉄也

「分かりました」


 こうしてミナモさんから指輪を貰った。




ー学校近くのコンビニー


コウ

「で、ずっと指輪をはめているのかー」


 コウはコンビニで買ったアイスを食べながら僕に話しかけてきた。


鉄也

「うん」


 僕もコンビニで買ったジュースを飲みながら答える。


コウ

「すげー綺麗な宝石だなー。ルビーかー?」


鉄也

「えへへ。分からないけど、気に入ってるよ」


コウ

「そういえば小学生の頃もミナモさんから貰った帽子、穴が空くあくまでずっと被っていたもんなー」


鉄也

「ミナモさんからの貰い物はなんであれ嬉しいよ」


ゴリラ

「くうううううううぅぅぅぅぅぅっ!! 嫉妬しちまうぅぅぅぅぅぅっ!! はっ!? そうだっ!! 鉄也っ!! これをつけてくれぇっ!!」 


 ゴリラは胸ポケットから小さな箱を取り出す。蓋を開けると大きなダイヤモンドの指輪が出てきた。


コウ

「うわ……ダイヤデカッ……。え、ガチやん……」


ゴリラ

「俺のダイヤモンドの指輪っ!! いつか婚約する時にって思ってとっておいたんだっ!! さぁっ!! 鉄也っ!! 俺の愛を受け取ってくれっ!! そして結婚しようっ!!」


鉄也

「え? やだ」


ゴリラ

「がああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!! 受け取ってよおおおおおおぉぉぉぉっ!! でもそんな鉄也が好きなのんっ!!」


コウ

「ゴリラの馬鹿は放って置いて映画を観に行こうぜーっ!! 今月から全米が泣いたっていうヒーロー映画がやってるらしいからよーっ!!」


鉄也

「じゃあ、映画館まで競走だねっ!! ビリの人はチケット、ポップコーン、ジュース奢りねっ!! あと映画の後、お寿司食べたいから回らないお寿司屋さんでお寿司の奢りねっ!!」


コウ

「おーっ!! それは絶対に負けられねーなーっ!!」


ゴリラ

「それ俺が奢りになるやつじゃんっ!! お前等っ!! 足速いんだからさっ!! あと鉄也っ!! お前っ!! めっちゃ食うじゃんっ!! 俺の財布の中身が空になるまで食うじゃんかっ!!」


鉄也

「ゴチになりますっ!!」


ゴリラ

「もう決めてんじゃんかっ!! それもう俺の奢りだって決めてんじゃんかっ!! しかもめっちゃいい笑顔やんかっ!! でも推しのマイスイート鉄也に貢げる幸せえええええぇぇぇぇっ!!」


コウ

「え? 俺もゴチになるぞー」


ゴリラ

「お前に奢る気はねえええええええぇぇぇぇぇっ!!!! こうなったらコウにだけは絶対に負けねぇぞっ!!!!」


コウ

「ほらー、早くしないと置いて行くぞーっ!!」


鉄也

「早くしないとビリになっちゃうよっ!!」


ゴリラ

「やってやんよっ!! 今日こそ奢り回避するからなぁっ!!」


鉄也

「よおおぉぉい、ドンッ!!」


コウ

「おーっ!! 相変わらず速いなーっ!!」


ゴリラ

「待ってよおおおおおおぉぉぉぉぉっ!! お前等っ!! 時速何キロで走ってんだよおおおおおおおぉぉぉぉっ!!」


鉄也

「ひやっほおおおおおぉぉぉぉっ!!!!」


 夏の青空の下、僕達はどこまでも走って行く。


 僕には大切な人達がいっぱいいる。


 僕の隣に立って戦ってくれる大親友。変態だけど友達想いの幼馴染。僕を真っ直ぐ導いてくれた変態に愉快な変態達。そして僕を家族として愛し、支えてくれた恩師。変わっている人は多いけど、みんな僕の大切な人達だ。


 そんな人達と笑って過ごせる奇妙で愉快な僕達の青春。僕達の物語。この青空はどこまでも続いていく。




ー?目線ー


「……」


鉄也

「早くしなよっ!! ゴリラッ!!」


コウ

「置いて行っちまうぞーっ!! 奢り回避すんじゃねーのーっ!?」


ゴリラ

「ぜぇ、ぜぇ……お前等っ!! ぜぇ、ぜぇ……速過ぎるだろうがっ!!」


 私の横を通り過ぎて行く、鉄也くん達。無邪気に笑う姿はどこにでもいる普通の高校生だ。


 私もあんな風に笑っていたのはいつの事だろうか……。おっといけない……。


 私は私の望む世界の為に立ち止まれないのだから。過去に未練を持つワケにはいかない。


「もうすぐだね。鉄也くん」


 走り去る鉄也くん達を見ながら呟いた。


ー?目線終了ー

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