第80話 卯月

亜数

「『黄泉路への鳥籠よみじへのとりかご』っ!! 発動っ!!」


 亜数さんの能力は周囲に存在するモノを支配する。そして支配下に置いた空間と亜数さんが現在いる空間を繋ぐ出入り口を作る事や支配下に置いた空間にあるモノなどを亜数さんのいる空間に出す事も可能。


亜数

「『亜数特製・広々クローゼット』っ!!」


 亜数さんは5メートルくらいはあろうかという大きさの漆黒のクローゼットを出したっ!!


亜数

「コイツはオリハルコンで作り上げたクローゼットっ!! 中には俺の異界を展開させてあるっ!!」


コンスケ

「えっ!? 貴方の『異界』を展開させてあるのっ!? えっ!? ボクその中に入らないとならないのっ!? めっちゃ嫌なんだけどっ!?」


亜数

「文句を言うんじゃあないっ!!」


コンスケ

「仕方ないか……」


 コンスケはクローゼットの扉を開き、中に入る。


『なんで内装がよりにもよってっ!! 男子トイレみたいなんだよっ!! 怪我人をトイレで治療するなんてあってはならん事だろうがっ!!』


 クローゼットの中からコンスケの叫び声が聞こえた。


亜数

「だが、100人くらいは入れそうな広さだろう?」


『そりゃ確かに広いけどさぁっ!!』


鉄也

「……まぁ、中はどうあれ……作戦通りに進めるよ。コウ、奴の注意を僕等にだけ集中させるよっ!!」


コウ

「おーっ!! 『ストーン・アーマー』っ!!」


 コウは能力を発動させ、『神木霊剣』を硬化させる。『神木霊剣』はコウの能力の効果により、漆黒に染まる。


鉄也

「『銀月・三日月』っ!!」


 僕は流動力の斬撃を怨害に向かって放つっ!! 怨害は漆黒の腕を出して僕の斬撃を防ぐっ!!


怨害

「んおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」


 怨害は謎の奇声をあげ、赤黒いモヤの塊のような体から黒い腕を複数出すっ!! その腕は全て僕に目掛け伸ばされるっ!!


鉄也

「コウッ!!」


コウ

「あいよーっ!! オラァッ!! オラオラオラオラオラオラオラアアアァァァッ!!」


 コウが僕の後ろから飛び出し、黒い腕を全て薙ぎ払うっ!!


怨害

「んほおおおおおぉぉぉぉぉほおおおぉぉぉんっ!?!?」


コウ

「なんか気が抜けるような叫び声だなー」


鉄也

「コウ、油断しない」


亜数

「そうだぞ。怨害には決まった形がない。姿形は自分で変えられる」


コウ

「そういう前情報を早めに言えよ」


亜数

「いや、怨害相手なら常識だぞ」


熊丸

「常識ですね」


ゴスペル

「常識にょ」


コウ

「俺、初見だからなっ!! お前達と違ってっ!! 俺は初見なのっ!!」


鉄也

「……そうだったんだ……。知らなかった……」


コウ

「なんでお前は知らねーんだよーっ!! お前は知ってろよーっ!!」


 そんな事を言われても僕、1回しか怨害と戦った事ないからな……。知り合いの霊媒師もそんな事、言ってなかったし……。


コウ

「『そんな事を言われても僕、1回しか怨害と戦った事ないからな……。知り合いの霊媒師もそんな事、言ってなかったし……』みたいな顔をするなーっ!!」


 ……なんで僕の考えが分かったんだよ……。


コウ

「『なんで僕の考えが分かったんだよ』って思っただろーっ!? 何年お前と一緒にいると思ってんだよーっ!! 表情見れば大体分かるぞーっ!!」


ゴスペル

「にょっ!! こ、これが『以心伝心』っやつかにょっ!? これが『てぇてぇ』ってやつかにょっ!?」


コウ

「言ってる場合かーっ!!」


 ニャンタロスと熊丸は怨害の隙を見て、捕らえられている人達の所に駆け寄るっ!! ニャンタロスと熊丸は半透明の紫色の球をジッと見るっ!!


ニャンタロス

「これは流動力を吸収するモノかにゃ」


熊丸

「これを傷付けたところで中の人には害はなさそうですね」


 ニャンタロスと熊丸は半透明の紫色の球を殴り壊し、中の人を助け出すっ!!


怨害

「のおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」


 半透明の紫色の球が壊された事に気付いた怨害はニャンタロスと熊丸に襲い掛かろうとするっ!!


鉄也

「させるかっ!!」


 僕が怨害に前蹴りして奥の方まで吹っ飛ばすっ!!


怨害

「んほほほほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?!?」


鉄也

「もっと攻めるぞっ!!」


コウ

「おーっ!!」


 僕は『銀月』、コウは『神木霊剣』で怨害に斬り掛かるっ!! 怨害は黒い腕を地面から出現させ攻撃を防ぐっ!!


怨害

「んほほほんほほほんほおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉんっ!?!?」


コウ

「驚いたぜー。この木刀でも消滅しないのかー。やるやんかー」


鉄也

「コウッ!! 熊丸とニャンタロスの邪魔をさせないでよっ!!」


コウ

「そんな事を言われなくても分かっているよーっ!!」


 ニャンタロスは『猫足時空ねこあしじくう』。空間と空間を繋ぎ合わせて移動する能力で熊丸と共に救出した人達をクローゼットの前に空間移動させるっ!!


亜数

「よしっ!! コイツ等をクローゼットに入れるぞっ!! お? この男……いい体つきじゃあないかっ!!」


ゴスペル

「変な事するんじゃないにょ」


亜数

「…………ああ、分かってる……」


ゴスペル

「今の間はなんなのか詳しく聴きたいにょ」


 ゴスペルと亜数さんは助け出した人達を担いで、クローゼット内に避難させる。


怨害

「んのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉんっ!!!!」


 怨害は亜数さんとゴスペルに突撃するっ!!


ゴスペル

「ここはオイラの出番にょっ!!」


 怨害は黒い腕を体から出してゴスペル目掛けて伸ばすっ!! ゴスペルは片手斧『ハチェットラケット』を構えて斬り払うっ!!


ゴスペル

「オイラの斧は特別な斧でにょ。切れ味バツグンにょ」


怨害

「のおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉんっ!!」


 ゴスペルの能力である『トリック・オア・トリート』は姿を他者に見えないようにするという戦闘向きではない能力だが、ゴスペルは意外に戦える。


 ゴスペルの愛用する『ハチェットラケット』という片手斧は、流動力を込める事により実体が無い霊体すら斬り裂く事が可能になる。


 そしてゴスペル自身もかなり動ける。力もそれなりにあり、軽自動車程度なら軽く持ち上げられる。

 

ゴスペル

「にょほほほ。オイラなら倒せると思ったのかにょ? 残念だったにょっ!! オイラもそれなりに強いにょだっ!!」


亜数

「まぁ、俺達の中では弱い部類だがな」


熊丸

「まぁ、あと100年あれば200年前の僕には勝てるんじゃないかな? たぶん」


ゴスペル

「……にょぉ……。たまにはカッコつけさせてほしいにょ……」


怨害

「うぉうぉうおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉんっ!!!!」


 怨害は赤黒いモヤの塊のような体から黒い腕を出すっ!! そしてその黒い腕から真っ赤な球体を作り出したっ!!


熊丸

「っ!? あれは『霊力玉砲れいりょくぎょくほう』っ!? あんな技まで習得していたのかっ!?」


亜数

「確か……上位の霊的な存在が会得できるって技か……」


怨害

「あいやああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」


 怨害はその真っ赤な球体をゴスペルに目掛けて放つっ!!


鉄也

「卯月っ!!」


卯月

「『鏡花水月きょうかすいげつ』発動っ!! 『猫足時空ねこあしじくう』再現っ!!」


 僕は卯月の能力でゴスペルの前に空間移動し、怨害が放った真っ赤な球体に斬撃を飛ばして相殺するっ!!


コウ

「今のは卯月の能力かー?」


鉄也

「そうだよ。これが卯月の能力。『鏡花水月』だよ」

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