第79話 乱暴に扱っているって自覚しているならやめてよ

 僕は『銀月』を作り出し、洞窟内で振り回してみる。うん、充分戦えるか。ただ洞窟という狭い空間だからなぁ。


 しかし、嫌な洞窟だ。排水に漬け込んだ生ゴミと線香が混じり合った匂いがする。


鉄也

「……とりあえず、歩く順番を決めるよ。先頭は僕とコウ。次はゴスペル、亜数さんは最後尾で行こうか。卯月とニャンタロスは僕の肩に乗って。熊丸とコンスケはゴスペルの肩に乗って」


卯月

「至近距離に鉄也様が……はぁ、はぁ……」


ニャンタロス

「にゃぁ、楽ちんにゃぁ」


熊丸

「ゴスペル、右肩借りますよ」


コンスケ

「ゴスペル、左肩借りるよ」


ゴスペル

「にょぉ」


亜数

「なるほど俺はゴスペルの尻を追いかけていればいいのか」


ゴスペル

「その言い方やめるにょっ!!」


コウ

「しかし暗いなー。明かりとかないのかー?」


鉄也

「懐中電灯あるけど……つける?」


コウ

「おー、頼むわー」


 ポケットから懐中電灯を取り出して、スイッチを入れ周囲を照らす。


コウ

「足元が思っていたより石が少ないなー。洞窟だからよーもっと足元ゴツゴツしているかと思ったぜー」


鉄也

「うん」


 でも奥の方に禍々しい気配を感じる。よくよく見ると洞窟の壁には赤黒いモヤのようなモノがいくつもある。


鉄也

「……」


亜数

「コウ。あの赤黒いモヤのようなモノは見えるか?」


コウ

「薄っすらなー。でもハッキリとは見えねーなー」


亜数

「……コウ……。お前、霊感が身につき始めているぞ」


コウ

「ほー、そうなのかー」


亜数

「……驚かないんだな……」


コウ

「まーなー。今更どんな力に目覚めても驚きはしねーよー。幽霊も見ちまった事あるしよー」


亜数

「……まぁ、それもそうか……」


鉄也

「前から何か来る」


 前方から黒いモヤまとった猿のような生物が3匹ほど現れた。その猿のような生物は僕等に目掛けて突進してきた。


鉄也

「コウッ!!」


コウ

「おうっ!! 『メタリック・フィールド』っ!!」


 コウはコウ自身と僕の周囲の空間の流れを硬化させ、固定して壁を作り出し、猿のような生物の攻撃を防ぐっ!!


鉄也

「コウッ!!」


コウ

「おうよっ!!」


鉄也

「ウラアアアァァァッ!!!!」


 コウが壁を解除するっ!! そしてバランスを崩した猿のような生物の首を僕は一斉に切り落とすっ!!


猿のような生物1

「うきゃぁっ!?!?」


猿のような生物2

「うぎゃあぁっ!?!?」


猿のような生物3

「うきぃやぁっ!?!?」


 首を切り落とされた猿のような生物達はチリになって消え去った。


鉄也

「……」


コウ

「ナイスー。……で? あの猿みたいのはなんなんだー?」


亜数

「アレは怨害の一部だ。力を得た怨害はああやって体を分離させて、攻撃を仕掛けてくる事がある」


コウ

「へー、あーいう事もできるのかー。『怨害』ってのは思っていたより厄介なのかもなー」


鉄也

「ん、まだ来るみたい」


 洞窟の奥からワシのような生物、蛇のような生物、狼のような生物、大きいサソリのような生物、2メートルくらいの大きさの蜘蛛のような生物など黒い生物達がこちらに向かって突進してくるっ!!


コウ

「大量だなー」


鉄也

「気を紛らわせるにはちょうどいい」


コウ

「鉄也っ!! 行くぞーっ!!」


鉄也

「うんっ!!」


 僕とコウは黒い生物達に向かって突進するっ!!


鉄也

「ウラァッ!!」


ワシのような生物

「くぅえぇっ!?!?」


 僕はワシのような生物を真っ二つにするっ!! 前からサソリのような生物が尾を伸ばし、尾についている針で僕を突き刺そうとするっ!!


コウ

「オラァッ!!」


 コウはその尾を左手で掴むと自身の所に引き寄せながら突進するっ!! そして右手に持っている『神木霊剣』でサソリのような生物の頭に突き刺すっ!!


サソリ

「ぴええええぇぇぇぇっ!?!?」


コウ

「うおっ!? この木刀みたいに触れたら一瞬でチリになったっ!? これが『神木霊剣』の力かっ!?」


鉄也

「『神木霊剣』はとある神社の御神木から作られた木刀らしいから霊的な存在には効果抜群なんだって」


コウ

「ほー、すげーなっ!!」


鉄也

「あっ!?」


 コウは『神木霊剣』をぶん投げ蜘蛛のような生物、蛇のような生物、狼のような生物を一斉に貫くっ!! 貫かれた黒い生物はチリとなって消え去るっ!!


コウ

「よしっ!! ナイス一撃ってやつじゃーんーっ!!」


鉄也

「投げないでよっ!!」


 僕は『神木霊剣』を拾い上げ、コウに投げる。コウはサッと受け取る。


コウ

「いや、一斉に消したら気持ち良さそうだなーってー」


鉄也

「壊れたらどうするんだよ。頑丈だけど木刀だよ」


コウ

「ほー、なかなかいい木刀じゃーねーかー。俺がこんだけ乱暴に扱ってもまったく壊れねーんだからなー」


 まったく……。乱暴に扱っているって自覚しているならそれをやめてよ。もう少し丁寧に扱ってほしいよ。


コウ

「気に入ったぜー」


鉄也

「やれやれだよ。次が来るよ」


 2メートルくらいの大きさのアリのような生物が群をなしてこちらに襲い掛かってきた。


 コウは『神木霊剣』をバットのように振りかぶるっ!!


コウ

「ヒアリってのに似ているような気がするなー。デカけりゃいいって問題じゃーねぇんだよーっ!!」


 そして先頭にいたアリのような生物の顔面にフルスイングしてそいつの頭をカチ割るっ!!


鉄也

「ニャンタロスっ!! 出番だっ!!」


ニャンタロス

「にゃーにお任せにゃっ!! 『猫足時空ねこあしじくう』っ!!」


 ニャンタロスの能力で僕はアリのような生物の群れの中心部に空間移動する。


 僕は『銀月』を投げ、後方の奴等を串刺しするっ!! そして前方の奴等は拳のラッシュを叩き込み倒していくっ!!


コウ

「アリ共は一掃したかー」


鉄也

「この程度で僕達を倒せるとは思わない事だね」


 僕は投げた『銀月』に戻るように命じ、手元に戻ってきてもらう。


亜数

「あの2人……成長しているな。俺と戦った時よりも強くなってやがる……」


ゴスペル

「そうにょねぇ。やっぱり若者の成長はオイラ達のような老ぼれには眩し過ぎるにょ」


熊丸

「ゴスペル。僕より生きていない若造が何を言っているんですか」


ゴスペル

「にょぉ、そうかもしれないにょけどにょ」


鉄也

「奥に進むよ」


 僕達は再び奥に歩き続ける。


 奥に行けば、行くほどに体にまとわりつくような生暖かい風と禍々しい気配が近付く。周囲の岩壁から出ている赤黒いモヤの量も多くなってきている。嫌な匂いも強くなり鼻がひん曲がりそうだ。


コウ

「なんか嫌な気配っていうのかなー。そんな気配がなんか近くになってきたなー」


鉄也

「嫌な匂いがして……嗅覚がマトモに働かないよ……」


コウ

「確かになんか臭いよなー」


 僕達は歩み続ける。そして広い空間に出た。


 そこには岩壁にびっしりと半透明の紫色の球体が張り付いていた。


コウ

「なんだ? あの球体は?」


 その球体をよくよく見ると中には行方不明になっていた人達が捕らえられてたっ!? 部屋の隅にはゴリラがいるっ!!


 ん? なんかゴリラを捕らえている球体だけ色が違う……。なんかピンク色だ……。


 いや、そんな事はどうでもいいっ!!


鉄也

「ゴリラッ!!」


 僕がゴリラに駆け寄ろうとするとコウに止められる。


コウ

「落ち着け。敵もお出ましだぞ」


 奥から赤黒いモヤの塊『怨害』の本体が現れた。


鉄也

「みんな、作戦通りに頼む」


コウ

「おー」


 ニャンタロスは僕の肩から飛び降りる。


ニャンタロス

「任せるにゃ」


亜数

「おうよ」


 ゴスペルは片手斧を出現させる。


ゴスペル

「久々にオイラの斧の出番にょ」



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