第78話 異界突入

 僕達は『黒霧神社』に到着し、社の裏側にある『異界』への入り口の前に立つ。


 昨日と同様に赤黒いモヤが集まっている。その赤黒いモヤを見て僕は憎らしいと感じていた。


鉄也

「……ここだよ……」


亜数

「ふぁっ!? な、なんだっ!? コイツはっ!? コイツは一体何百年前からここに居座っていたんだっ!? いや、そんな事より一体何人の魂を喰らいやがったっ!? こんな力を蓄えていやがるヤツは初めて見たぞっ!?」


熊丸

「随分と育った『怨害』ですね……」


コンスケ

「ここまで力を蓄えているのは久々に見ましたね……。ここまで大きいのは何百年ぶりだろうか……」


コウ

「おいっ!! ちょっと待てっ!! 人の魂を喰らうってなんなんだよっ!? どういう事だよっ!?」


亜数

「怨害は自身の存在維持の為に生きた人間の負の感情と流動力を喰らう。だがそれ以外にも存在維持をする方法がある。それは殺したばかりの人の魂を喰らう事だ」


コウ

「っ!?」


亜数

「殺害された魂は……未練やら負の感情やらが宿る事が多いからな……。怨害はそういう魂を喰らう事で存在維持や力を蓄える事もできるんだ……」


鉄也

「亜数さん……。聞いておきたいんですが……怨害が……もう攫った人間や……昨日攫ったゴリラを……もうすでに殺しているって可能性ってありますか?」


亜数

「……ここは嘘を言っても仕方ないと思うから正直に答えるぞ……」


鉄也

「はい……」


 亜数さんはいつものふざけた感じではなく、真剣な顔付きで僕を見る。


亜数

「正直言って、わからん……。ここまで育った怨害を見るのは初めてだからな……。判断ができん……。ここまで大きいからな……もうすでに殺された後って可能性はある……」


鉄也

「……そう……ですか……」


熊丸

「ですが、鉄也様。怨害はそう簡単には人を殺したりはしない場合が多いです」


 熊丸はすぐに話し始める。


熊丸

「リスのように自らの餌を自分の巣に持ち帰り、蓄えるケースが多いです。まだ死んでいると断定するには早いかと思います」


コンスケ

「……でも、ここまでの大きさだし……鉄也様がそばにいてもその友達を襲ってきたんですよね……。そう考えると……最悪のケースを考えていた方がいいかもしれませんね……」


卯月

「コンスケッ!! 貴方っ!!」


コンスケ

「卯月、ここは下手に希望を持たせない方がいいと思う。希望を持たせるだけ持たせて死んでいた時……鉄也様の心に……」


卯月

「……でも、言い方ってモノがあるでしょっ!!」


コンスケ

「じゃあ、なんて言ったらいいんだよ」


卯月

「それは……」


鉄也

「卯月。いいんだ……」


卯月

「鉄也様……」


 最悪の場合を考えておくのは悪い事じゃない。けど……それでも……。


鉄也

「それでも……生きている可能性は0ってワケじゃない……。それだけ分かれば充分だ」


 僕はカバンに隠していた学校の制服であるブレザーに着替える。


コウ

「ホテルで着替えて来いよ」


鉄也

「いやぁ……カバンに入れていたのを今思い出してさ……」


 僕等の通う学校の制服はそれなりにいい素材が使われており、ちょっとした銃火器の弾丸やナイフなどの刃を多少なら防いでくれる。


コウ

「そっか。でも人目は気にしろよ。ほら馬鹿共が鼻血出してんだろうが」


 コウが指差した方を見ると卯月、ゴスペル、亜数さんが鼻血を出して満面の笑みを浮かべていた。


亜数

「ナイスッ!! ハレンチタイムッ!!」


ゴスペル

「鉄也様……スケベ過ぎるにょっ!!」


卯月

「鉄也様ってば……」


鉄也

「?」


 なんで鼻血出しているんだろう?


 まぁ、いいか。気にしても仕方ないし……。


 その後、能力で『銀河』を作り出し、身にまとう。


 『銀河』は、僕の能力で作り出した銀色のコート。このコートは、僕自身や他者が身にまとう事で効果を発揮する。僕の『流動力』を吸い上げて、様々な事象が僕に触れた瞬間、それを無力化させる事が出来る。


 そしてミナモさんから貰った般若の面をつける。


 コウもカバンから黒いコートと黒い鬼の面を取り出し、身にまとう。


コウ

「さーてー……じゃー、『黒鬼コンビ』とその他共、出撃と行こうかーっ!!」


ゴスペル

「その他はやめてほしいにょっ!! せめて『鉄也様に従う愉快な仲間達』にしてほしいにょっ!!」


卯月

「チーム名は『鉄也様と卯月のハネムーンパーティー』にしましょうっ!! それがいいですのっ!!」


ニャンタロス

「なんでもいいんじゃにゃいかにゃ……」


コンスケ

「まったく……相変わらず……緊張感のカケラもない奴等だと思うよ……」


熊丸

「まぁ、下手に緊張しちゃうよりは……いや、ダメだな……。鉄也様のお友達の命がかかっているのだから……もっと緊張感はあるべきだね」


亜数

「はい。馬鹿共は放置して行くぞ」


鉄也

「コウ。これ……」


 僕はコウに『神木霊剣』を渡す。コウは人より勘がいい。けど、霊的な存在に干渉する事はできない。だから元々コウの武器用にこの武器は用意したのだ。


コウ

「サンキューなー」


鉄也

「じゃあ、行こうっ!!」


 僕達は異界の入り口に飛び込んだ。



 そして辿り着いた場所は……洞窟の中のような場所だった。薄暗く、ジメッとした感じがある。広さは……刀を振り回せるくらいには広いな……。


鉄也

「コウ。気を付けて。ここは相手の『異界』の中……。何が起きるか分からないから」


コウ

「おう」

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