第73話 赤黒いモヤ

ゴリラ

「なんでえぇっ!! なんでっ!! 俺も一緒に連れて行ってくれなかったんだよっ!! 俺達っ!! 友達だろうがっ!! どおぉぉうしてだよおおおおおおおおぉぉぉぉぉうぅぅぅぅっ!! 何故だっ!! 何故だっ!! なんでなんだよおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?!?」


鉄也

「……仕事をしに行くのに友達を連れて行くワケないでしょう……」


コウ

「それなー」


ゴリラ

「俺と鉄也はいつでもっ!! どこでもっ!! ずっと一緒だろうがっ!! 俺のところからいなくならないでくれえええええええええええええぇぇぇぇぇっ!!!!」


鉄也

「何言っているの?」


コウ

「さー? 俺にも意味分からんなー。なんか言い方からして離婚を突きつけられた野郎みてーだなー」


鉄也

「コウ、ここ最近昼ドラでも観たの?」


コウ

「おー。観たわー」


ゴリラ

「まぁ、冗談はさておいて……仕事って言っていたが……喫茶店関連じゃねぇよな。組織の仕事なのか?」


鉄也

「うん」


 ゴリラだって『国の盾』が管理している学校の生徒だ。組織の事情なども知っている。組織の仕事というモノが危険な仕事である事くらいは知っている。


 そして掛け替えのない友人であるゴリラが真剣な顔をしている時に嘘を言うのはゴリラに対して失礼だ。だから正直に答えた。


ゴリラ

「……俺は力になれねぇか?」


鉄也

「危ない仕事だからね。大切な友人であるゴリラを巻き込ませないよ。それにこの仕事は僕とコウが頼まれたモノ。友達を危険に巻き込むような事はしないよ」


コウ

「そうだなー……。なんだかんだでゴリラは俺達にとって大事な友達だからよー」


ゴリラ

「そっかぁ……。まぁ、それなら仕方ねぇか……。仕方ねぇけど、無理すんなよ」


 ゴリラは友達思いのいい奴だ。きっと僕とコウが任務で出掛けるところを見て、僕達が心配になって来ちゃったのだろう。


鉄也

「……心配かけてごめん……」


ゴリラ

「別にいいさ。むしろこっちこそ、すまん。仕事の邪魔して……」


コウ

「とりあえずよー、日が暮れてきたからホテルの方へ一緒に行くかー。鉄也の話が本当ならよーこのままゴリラに帰ってもらうってのも危なそうだしよー」


鉄也

「そうだね。そうしようか」


 夕暮れ時から夜にかけては『怨害』の活動が活発になる。だから僕やコウの目の届く所にいてもらう方がいいだろう。


ゴリラ

「お? おっ!? 鉄也とホテルでお泊まりかっ!? お泊まりデートなんですかっ!? ひぃやっほおおおおおぉぉぉぉうぅっ!! 鉄也っ!! 今晩は寝かせないぜっ!! 長い夜になりそうだなっ!! ひゅうぅぅっ!!」


 あの……なんだろう……。気持ち悪い言い方するのやめてもらってもいいですかね……。鳥肌が立つくらい気持ち悪いんですよね……。友人相手にそんな事を思う自分に驚いたんですよね……。


コウ

「馬鹿な事を言ってないで早く行くぞー。さっさとしねーと日が暮れちまうぜー」


ゴリラ

「おうよっ!! それじゃっ!! 案内頼むぜぇっ!!」


 そうして、ゴリラはずんずんと先に歩き始める。


コウ

「お前ホテルの場所知らねーだろーがー。俺達の後ろをついて来いよー」


 僕とコウはゴリラの後ろを歩きながらホテルに向かうとした。その時だった。



ゴリラ

「っ!? な、なんだっ!?」


 ゴリラの足下から赤黒いモヤが出現するっ!? あ、あのモヤはっ!? 神社のっ!?


コウ

「っ!? なっ!? あのモヤから神社で感じた嫌な気配っ!?」


鉄也

「っ!? ご、ゴリラッ!?」


 赤黒いモヤはゴリラの体を徐々に包み込んでいくっ!!


鉄也

「マズイッ!! 連れ去られるっ!! コウッ!!」


コウ

「分かっているっ!!」


 僕とコウはすぐにゴリラを救おうと動くっ!! 僕等がゴリラに近付こうとするとゴリラの体を包もうとしている赤黒いモヤは、赤い球体が飛ばしてきたっ!! 僕とコウはそれを避け、ゴリラの所に駆けるっ!!


鉄也

「ゴリラッ!! 手を伸ばしてっ!!」


 僕はゴリラの手を掴もうとするっ!! だが赤黒いモヤから漆黒の腕が出現するっ!!


 そんなの知った事かっ!! 早くっ!! ゴリラを助けなくてはっ!!


 僕はゴリラを赤黒いモヤから引き摺り出そうと気を取られ過ぎてしまったっ!!


 その腕が僕自身に向けての攻撃だと気付くのに遅れてしまったっ!!


 僕はその腕に鳩尾みぞおちを殴られるっ!!


鉄也

「ゴフッ!?」


 その一撃は重く、激しい痛みを腹部に感じたっ!! その瞬間に僕は吹き飛ばされ、近くのブロック塀に叩き付けられたっ!!


鉄也

「ガッ!?」


コウ

「っ!? 鉄也っ!? 野郎っ!! オラアアアァァァッ!!」


 コウはその漆黒の腕に殴り掛かるっ!!


 だがコウの拳よりも腕の方が速いっ!! コウの拳が漆黒の腕に当たる前に一瞬で赤黒いモヤの中に腕が引っ込めたっ!!


ゴリラ

「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?」


 そしてゴリラはそのまま地面に引き摺り込まれ姿を消した。


鉄也

「ご、ご……ゴリ……ラ……」


 ゴリラが目の前から消え去った。護れなかった。何もできなかった。


コウ

「ゴリラアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァッ!?!?」


鉄也

「くっ!!」


 僕は急いで神社に戻ろうとするっ!! だがコウはそれを止めるっ!!


コウ

「どうするつもりだっ!?」


鉄也

「決まっているだろうっ!! 神社に戻ってゴリラを助けに行くんだよっ!!」


コウ

「夕暮れ時から夜にかけて活発になるんだろうがっ!! 落ち着けよっ!!」

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