第63話 …… 僕も見せようか……。本当の『真名』ってヤツを……

 ボスらしき男は熊丸に任せている間に随分と姿が変化していた。あの感じは『真名』か? でもなんか違う気がする。


 『真名』とは、能力の極致。能力を極め、自身の能力の意思に触れ、その意思に認められた先に会得できる奥義のようなモノらしいけど……。


 なんか僕の使う『真名』とは違う気がするなぁ……。


 なんというか……鞭とか鎖とかで無理矢理従わされている動物のようって表現するべきなのだろうか……。


 あのボスらしき人の体から苦しんでいる魂の気配がする。


鉄也

「熊丸。どういう状況?」


熊丸

「おそらく妖刀の力を使い、無理矢理力を引き出し、不完全な『真名』を発動させたのかと考えられます」


鉄也

「……それでか……」


 『能力』というのは意思がある。


 それなのにその意思を汲み取らずくみとらず、出したくない力を無理矢理引き出したのか……。そりゃ苦しいだろう……。


鉄也

「まったく……『能力』ってのは、自分の半身だっていうのに……それを無理矢理引き出したって……真の力は発揮できないだろうに……」


レガナ・オクトパス

「おいっ!! 何をごちゃごちゃ言ってやがるっ!!」


 8本の吸盤がついた腕が僕と熊丸に襲い掛かるっ!!


鉄也

「『銀月・三日月』っ!!」


熊丸

「『斬刀熊丸』。2の太刀『月輪熊つきのわぐま』」


 僕の飛ばした斬撃と熊丸の回転しながらのパンチで腕を切り落とすっ!! だが切り落とした腕はそのまま僕等に飛んで来るっ!!


レガナ・オクトパス

「切っても無駄だっ!! 俺の腕はそれでも襲い掛かるっ!! そして俺の腕も瞬時に再生するっ!! さぁっ!! お前等に襲い掛かる腕は増えていくぞっ!!」


鉄也

「にゃっ!? 気持ち悪っ!?」


熊丸

「まるで芋虫のようですね」


鉄也

「とりあえずっ!! 全部斬るっ!! 熊丸は巻き込まれないように離れていてっ!!」


熊丸

「承知」


 熊丸は僕の後ろに下がる。僕は『銀月』を大きく振りかぶる。そして刀身に流動力を集め、圧縮させる。


鉄也

「特大サイズの『銀月・三日月』っ!!」


 僕は流動力を使って大きめの斬撃を飛ばし、襲い掛かる複数の腕を全て薙ぎ払うっ!! 僕の放った斬撃は襲い掛かる腕を全て消し飛ばすっ!!


熊丸

「さすが鉄也様。一撃の攻撃で全て消し去るとは……お見事です」


レガナ・オクトパス

「これならどうだっ!! 『サウザンド・オクトパス』っ!!」


 ボスらしき男は自ら腕を引きちぎり、その腕を僕の方に放り投げるっ!! その腕はタコの形に変形するっ!!


 なんのつもりか知らないけど、切り払うかっ!!


鉄也

「『銀月・三日月』っ!!」


 僕は斬撃を放ってタコのようなモノを切り裂くっ!! すると切られたタコのようなモノは分裂し再びこちらに来るっ!! そしてタコのようなモノ達は腕を伸ばし僕を捕らえようとするっ!!


 僕は跳んで空中に逃げるっ!! するとボスらしき男もジャンプし僕の方に来るっ!!


レガナ・オクトパス

「バカがっ!! 空中戦なら俺に分があるっ!! くたばりやがれっ!!」


 ボスらしき男は口から炎を吐き出すっ!! 僕は『銀月』を回転させて炎を防ぐっ!! 


レガナ・オクトパス

「下からも俺の作り出したタコは攻撃してくるぞっ!!」


 下にいたタコのようなモノ達も僕の方に跳んできて僕にまとわりつこうとするっ!! 僕は『銀月』の刀身を5メートルほど伸ばしてタコのようなモノ達を串刺してそのまま地面に突き刺すっ!!


レガナ・オクトパス

「これで武器は使えねぇなぁっ!!」


 僕は『銀月』の柄の先に着地する。


 ボスらしき男は瞬時に腕を再生させ、8本の腕で僕に殴り掛かるっ!! 僕は男の攻撃を両手で弾いて防ぐっ!!


 男は腕を伸ばし、天井に張り付く。随分と器用な事をするなぁ。


レガナ・オクトパス

「おぅおぅ。随分と耐えるじゃねぇかっ!! でもよぉっ!! そろそろ限界なんじゃねぇかぁっ!?」


鉄也

「まだまだ余裕だよ」


レガナ・オクトパス

「けどよぉっ!! その強気がいつまで続かなぁっ!?」


 ボスらしき男は口から球体状の炎を吐き出し僕に飛ばしてくるっ!!


 僕は拳に流動力をまとわせて攻撃を防ぐっ!! しかしボスらしき男は次々と炎の球体を吐き出し僕に飛ばしてくるっ!! 下手に避けたり、弾いたりしたら建物が火事になりかねないっ!! ここは拳をぶつけて相殺するっ!!


鉄也

「ウラララララララララアアアァァァァァァッ!!!!」


 ボスらしき男の放った炎の球体を全て拳を打ち込み撃ち消すっ!!


 さすがに能力による防御はなく、流動力をまとわせた状態の拳で防ぐのは熱いな……。


 中途半端な『真名』とはいえ、それなりの威力のある攻撃はできるのか……。流動力を拳にまとわせていなかったら火傷じゃ済まなかったな……。


鉄也

「……ちょっと熱かったかも……」


熊丸

「鉄也様。わざわざ素手で受けなくとも……」


鉄也

「いやぁ、どの程度の威力があるのかなって」


熊丸

「自分の体で試さないでください。もう1つでも2つでも武器を出したら良かったのではないでしょうか」


鉄也

「まぁ、そうなんだけどね。中途半端とはいえ、『真名』使える人とガチバトルは今までやった事なかったからさ。どんなもんか知りたかったんだよね」


レガナ・オクトパス

「随分余裕そうじゃねぇかっ!! だがよぉっ!! これで終わりにしてやるぜっ!!」


 レガナ・オクトパスは口から再び炎を吐き出そうとしている。今度は溜めの時間が長いな。次の一撃で終わらせる気かな? 


 このまま倒すのは簡単だけど……あの人にとって本当の『真名』を知らずにやられるってのはちょっと酷かなぁ……。それにあの人からこれ以上の奥の手があるように感じないし……。


鉄也

「…… 僕も見せようか……。本当の『真名』ってヤツを……」


熊丸

「鉄也様。あんな雑魚にわざわざ『真名』を……」


鉄也

「まぁ、相手はわざわざ本気を出して戦っているワケだし、僕も敬意を表さないとね……」


熊丸

「はぁ、そうですか」


鉄也

「真名発動。『天衣無縫龍王丸』っ!!」


 僕は『真名』を使うと姿が変化する。


 僕の髪は黒く、肩のところまでしかないのだが、『真名』を使うと髪は白く染まり腰まで伸びる。瞳の色も茶色から赤に変わる。着ている服装は何故か巫女服に変化する。出している武装とかも全て白く染まる。


レガナ・オクトパス

「っ!? な、なんだその姿はっ!?」


鉄也

「姿? あぁ、この姿か。僕さ、『真名』を発動させた時の僕自身の姿、気に入らないんだよね……。髪が伸びるし、着ている服装も巫女服みたいになる……。まるで女の子みたいで気に入らないんだよね……。まぁ、強いから使えるモノは使うんだけど……」


レガナ・オクトパス

「どんな姿になろうがっ!! 俺の炎は全てを焼き払うぞっ!! 『デス・ヘル・フレイム』ッ!!」


 ボスらしき男は口から火炎玉を僕に目掛けて飛ばす。僕はそっと右手を前に突き出す。


鉄也

「『夢想無撃むそうむげき』」


 『夢想無撃』は、僕の右手から放たれる波動砲だ。その攻撃に当たったモノの全てを拒絶し、破壊する。


 僕の放った波動砲は、火炎玉を消し飛ばしそのままボスらしき男に直撃する。


レガナ・オクトパス

「そ、そんなっ!? そんなバカなっ!? お、俺のっ!! 俺の最強の攻撃をっ!? そ、そんなっ!? ぐぅぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?!?」


 僕の攻撃もマトモに喰らいボスらしき男は断末魔をあげる。


 そしてボスらしき男が強制的に出した『真名』は解除され、天井から落下し地面に叩き付けられた。持っていた妖刀は粉々に砕け散っていた。


鉄也

「よし、倒した」


 僕は倒れているボスらしき男に近付く。息はしている。死なないようにかなり力を抑えて放ったけど、死んでなくて良かったよ。悪人といえど殺したくはないからなぁ。


熊丸

「相変わらず、恐ろしい攻撃ですね……。有と無そして流れを司る力。これほど敵にしたくない力は僕は知りませんよ。さすがは原初の能力とあのお方の能力が混じり合った力といったところでしょうか……」


鉄也

「なんか言った?」


熊丸

「いえ、何も……」


 僕は『真名』を解除し、いつもの姿に戻る。


鉄也

「さて、全員とっ捕まえますか」


 僕は銀行強盗の仲間達をとっ捕まえた。その後、ミナモさんに連絡した。


 思っていたより早く到着した。



ミナモ

「あの鉄也。『能力犯罪が増えてきているから鉄也も気をつけてね』って言ったよね?」


鉄也

「……」


ミナモ

「なのに自分から巻き込まれに行ったらダメじゃない」


鉄也

「いやぁ、面目ないです……」


ミナモ

「……私達ね。テロ組織『パイナポー』を捕まえる為にいろいろしていたけど……鉄也達が乗り込んだからいろいろと台無しなっちゃったよ……」


岩帝

「まぁ、そのおかげでこちらは被害はなく、敵を殲滅できたからええんじゃないかのぅ」


ミナモ

「それは結果論ですよ」

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