第6話 絶頂

鉄也

「とにかく僕ほど足止めが向いている人がいないんだから、ここは僕に任せてさっさと……」


 僕は石の台座を大きく振りかぶるっ!!


鉄也

「逃げてええぇぇっ!!」


 そして石の台座をピエロ男に目掛けて投げつけるっ!!


テン・バイヤア

「ええぇぇっ!? それ投げつけるのっ!? ええぇぇっ!?!?」


 ピエロ男は高くジャンプして躱わすかわすっ!! くっ!! あんな大きなお腹しといてなんて身軽なっ!!


ゴリラ

「あんなデカい腹しているのにっ!! なんて身軽なピエロだっ!!」


鉄也

「早く逃げろっ!! 僕が戦っている意味ないだろうっ!!」


 僕はゴリラの胸倉を掴む。


鉄也

「ウゥゥラアアアアアアァァァァッッ!!!!」


 そしてゴリラをそのまま出口の方へ放り投げるっ!!


ゴリラ

「ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?」


 ゴリラはものすごい勢いで飛んで行く。


 …………あ、力加減間違えた…………。


 まぁ、ゴリラはタフだしあれくらいじゃ、死なないだろう……。たぶん。


テン・バイヤア

「おいっ!! 友達なんだと思ってんだよっ!! 思いっきりふっ飛ばしやがってっ!! あれっ!? 生きてるっ!? ねぇっ!? 生きてるよねぇっ!?」


鉄也

「大丈夫。僕の友達『ゴリラ』は高さ50メートルの場所から落ちても死ななかった男だ」


テン・バイヤア

「50メートルって何っ!? それって大体17階建のビルと同じ高さだよねっ!? なんでそんな高い所から落ちたのっ!? そもそもここら辺にそんな高い建物あったっけっ!?」


鉄也

「場所はゴリラのお家です」


テン・バイヤア

「金持ちだなっ!! おいっ!!」


コウ

「落ちた理由はなんか後ろからこう……驚かしたら落ちた……」


テン・バイヤア

「お前がやったんかよっ!? お前等っ!! 友達なんだと思ってんだっ!! ゴラァっ!!」


鉄也

「そんな事より、コウ。後は任せて」


テン・バイヤア

「そんな事で済ませんなっ!! 友達を大事にしなさいよっ!!」


コウ

「鉄也、だがよぉっ!!」


鉄也

「信じて」


コウ

「……分かった。信じてるからなっ!!」


 コウは走ってこの場から離れる。


 コウもゴリラも良い人だから……あのままだったら、絶対僕を置いてけない。


 力任せでもああしないと離れなかっただろうし、僕がすごい力があるから安心してよって示す必要があった。


 これで良かった。これで僕以外の人が傷付くことはない。


テン・バイヤア

「その扱いの差はなんなのっ!? 友達大事にしなよっ!! って!! 逃すかっ!!」


鉄也

「行かせるかっ!!」


 僕はコウを追おうとするピエロ男の腹を掴んで社の方へ放り投げるっ!! 社の戸はピエロ男が激突した衝撃で壊れるっ!!


テン・バイヤア

「いっっでぇっ!? こ、この魅惑のマシュマロボディになんて事をっ!! この美腹びばらにアザができたらどうしてくれるっ!!」


鉄也

「僕が貴方を行かせると思うなよ」


 『ブスっ』 『ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?』 


 鈍い音と共にゴリラの絶叫が聞こえてきた。


テン・バイヤア

「……」


鉄也

「……」


 僕とピエロ男は戦闘態勢になっていたが……お互い構えを解除し、声のした方向を2人で静かに見つめる……。


『ゴリラ!! 大丈夫かっ!?』 『コウ……情けない状態だが……助けてくれね? 木の枝が尻に刺さって抜けないんだ。もうダメかもしれねぇ……』 『とりあえずその宙吊りの状態からなんとかするから待ってろっ!!』 『メキッ』 『アッー!? 俺のケツの中で何かが炸裂し、俺の中に眠る俺が解き放たれた』 『何言ってんだ? お前?』 『この感覚は尻に何かが刺さらなければ理解できないかもな?』 『何悟ってるの? お前?』


テン・バイヤア

「……お前の友達……。本当に大丈夫か? お前、逃す為にあのゴリラ顔の奴を放り投げたんだろうけど……」


鉄也

「僕は目が良い。見つめれば、何が起こっているか。大体分かる」


テン・バイヤア

「俺様も目が良い方だが……とんでもなく太くて硬そうな木の枝が尻に刺さっているな……」


 あ、アイツ、隙だらけ。


鉄也

「ウラアアアアアアァァァァッッ!!!!」


 僕はピエロ男のお腹に正拳突きを叩き込むっ!!


テン・バイヤア

「ぶえぇっふぇっふぇっ!?!? お、お前っ!? い、いきなり何しやがるっ!? 卑怯者っ!!」


鉄也

「うるさいっ!! 僕はこんな所でやられるワケにはいかないんだっ!! これで仕切り直しだっ!!」


テン・バイヤア

「一撃くらったんだがっ!? ごふっ!! ねぇっ!! 俺様っ!? 今っ!? 血を吐いたんだけどっ!? 俺様、内臓潰れてないっ!?」


鉄也

「僕の正拳突きをくらったらそれくらい当たり前だっ!!」


テン・バイヤア

「それ分かっていて人に拳を向けたのっ!?」


鉄也

「うんっ!!」


テン・バイヤア

「『うんっ!!』じゃねぇよっ!! この卑怯者っ!! 元気な返事だなっ!! ごぼぁっ!?」


 ピエロ男は膝を地面につけ、血を吐きながらそう言う。


テン・バイヤア

「砕けた肋っ!! 潰れた内臓っ!! どうにもならないんだぞっ!!」


鉄也

「ついでに枝が刺さった尻もね」


テン・バイヤア

「やかましいわっ!! ごばぁっ!?」


鉄也

「まぁ、僕は一瞬で治るんだけど……」


テン・バイヤア

「どんな身体してるんだ!? ぼおぉえぇっ!?」


 あ、すごい血吐いてる。


 コウとゴリラの匂いが全然遠ざからないなぁ……。早く逃げてくれないかな……。


『ゴリラっ!! 今、その枝を抜いてやるからなっ!!』 『やめてえぇっ!! そんなのっ!! 無理だからっ!! 無理だからああああああぁぁぁ!?!?』 『おかしいな。抜けない……。グリグリしてみるか』 『やめてっ!! それ以上はああああああぁぁぁ!?!?』


 ゴリラ達、早く行ってよっ!!


『イキそおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉうっ!?!?』


 さっさとこのピエロ男を倒して、ゴリラとコウを避難させないと……。


 僕は右足を高く上げピエロ男の脳天に踵を叩き付けようとするっ!! その瞬間、奴は左手で僕の踵を防いだっ!!


鉄也

「っ!? 手加減無しの踵落としが防がれたっ!?」


テン・バイヤア

「あぁ、危ねぇ、危ねぇ。咄嗟に爆弾で防がなかったら危ないところだったぜ。ん? 解せないって顔しているなぁ」


 僕は咄嗟に後ろに飛び、奴から距離をとる。よく見るとピエロ男の左手には再び薄桃色の球体があった。


テン・バイヤア

「俺様の『爆弾』は特殊でな。俺様が触れている間は爆発しないと言ったな。それにプラスして俺様が触れている時は衝撃吸収の効果があるんだぜ。今のお前の凄まじい威力の蹴りの破壊力が吸収されたのは理解出来るよな?」


 な、なんて厄介な……。


テン・バイヤア

「そして、吸収した衝撃は爆破の威力に加算される」


 ま、まさかっ!?


テン・バイヤア

「ほら。お前の後ろの方向に友達いるんだろう?」


鉄也

「っ!? な、何をっ!?」


テン・バイヤア

「ほら、護ってみろよっ!!」


 ピエロ男は薄桃色の球体を凄まじい速さで僕に投げ付けたっ!!

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