第5話 ピエロ男の顔面に泥を塗れっ!!

 ピエロ男は僕との距離を縮めていく。


 4メートル……3メートル……2メートル……今だっ!!


鉄也

「ウゥゥラアアアアアアァァァァァァァァッッ!!!!」


 僕は足元の土を右足で蹴り上げ、ピエロ男の顔面に叩きつけるっ!!


テン・バイヤア

「ぶえぇっふぇっふぇっ!?!?」


鉄也

「コウっ!! ゴリラっ!! 今だっ!! 逃げろっ!! ここは僕が引き受けるっ!!」


ゴリラ

「で、でもよぉっ!!」


コウ

「友達を見捨てるわけねぇだろうがっ!!」


鉄也

「すぐ追いつくからっ!! 今は行ってっ!!」


テン・バイヤア

「こ、このクソガキがっ!! 俺様のピエロ顔にっ!! よくもっ!! よくも泥をっ!!」


 くっ!! このピエロ男に反撃させる暇を与えてたまるかっ!!


鉄也

「ウラアアアアアアァァァァッッ!!!!」


 顔面に土が当たり動揺しているピエロ男の股間を蹴り上げるっ!!


テン・バイヤア

「アァヴゥッッ!?!?」


 ピエロ男は堪らず蹲ったうずくまった瞬間に僕は右足を振り上げ奴の頭に踵を叩き込むっ!!


テン・バイヤア

「ヴゥッブゥッ!?!?」


 僕は再び奴の頭に踵を叩き込もうとすると奴はナイフを振り回すっ!! 僕は後ろに飛んで攻撃を避けるっ!!


テン・バイヤア

「調子に乗りやがってっ!! このクソガキがっ!! 楽に死ねると思うなよっ!!」


 ピエロ男はナイフを持っている右手とは逆の左手を広げるっ!! そこから薄桃色の球体が突如現れたっ!! どこから出したっ!?


 奴が出した球体はパッと見た感じ野球ボールくらいの大きさのゴムボールに見える。


 だが、何かヤバいと思った。うまく説明できないがそれに真正面から当たってはならないと直感的にそう感じた。


 奴はそれを僕に目掛けて投げつけるっ!! 


 僕は咄嗟に後ろへ下がり近くに落ちていた小石を拾い球体に投げつけるっ!!


 僕の投げた小石が球体にぶつかった瞬間っ!! 爆発が起きるっ!! その爆風で僕は地面をゴロゴロ転がるっ!!


鉄也

「いったた……。今のは爆弾? いや、ポケットから物を出す暇なんてなかったぞ……」


コウ

「な、何が起きてるんだよっ!?」


ゴリラ

「なんでゴムボールが爆発するんだよっ!? おかしいだろっ!?」


テン・バイヤア

「このクソガキがっ!! 調子に乗りやがってっ!! 俺様の顔に泥を付けただけでなくっ!! 頭を踏み付けるとはっ!! 許さんっ!! 許さんぞっ!! 」 


 ピエロ男はズボンのポケットからピンクの花柄ハンカチを取り出すと顔の泥を拭きながら怒る。汚れを拭き終えると奴は僕を睨みながら怒鳴りつける。


テン・バイヤア

「楽に死ねると思うなよっ!! お前を痛めつけて殺した後っ!! お前の両手以外の体を豚の餌にしてやるからなっ!! お前の両手は便所掃除の道具に加工してやるっ!!」


鉄也

「今、何をした? 貴方にさっきみたいな爆弾を出す暇なんてなかったと思うんだけど?」


 僕がそう聞くと奴はニヤリと笑う。


テン・バイヤア

「ほぉう。ガキ、『能力』について知らねぇのか?」


鉄也

「『能力』?」

 

テン・バイヤア

「そうだ。俺様の能力『ボム・オブ・クラウン』は、球体状の爆弾を作り出す」


 ピエロ男は再びナイフを持っている手とは逆の手で薄桃色の球体を出して見せる。


テン・バイヤア

「この爆弾は俺様の手で持っている限り爆発はしない。手から離し、物体に当たると爆発する。俺の意志で爆破もできる。また、左右どちらかの手で1時間以上触れたある程度の重さがある物も爆弾に出来る。爆弾にされた物が爆発した時、跡形も無く消え去る」


鉄也

「……なら行方不明者の死体が未だに発見されないのは……貴方が殺した後、その方を爆弾に変えて消し飛ばしたからですか?」


テン・バイヤア

「その通りだ。俺は殺した奴は基本的に爆弾に変えて爆風を抑えて消し飛ばすって決めているんだ。下手に死体を残すといろいろ面倒だからな。人間を爆弾にする場合は大体1時間半前後ってところか……。それ以下の重さの物は1時間で爆弾に出来る」


鉄也

「……警察だって仕事はしっかりするはずです。ここに来て行方不明になっているのならここにも調べに来るはず……」


テン・バイヤア

「俺様の能力は優秀でな。生物の死体限定だが、爆弾にするとある程度俺様の意志で動かす事ができるようになる。俺様が殺して、爆弾に変えた死体は人気のない場所まで動かし、爆破させている」


鉄也

「……」


 なるほど……。監視カメラや人気のあるところまで動かしてわざと人目に触れさせ、人気の無い場所まで動かして爆破していたのか……。


 死体を操って動かせるのならこのピエロ男が動く必要はない。


 だからここの調査はあまりされないのか……。


テン・バイヤア

「この近くで行方不明とか起きて下手に捜査に来られて、国を裏側から護る組織……確かこの国は……『国の盾くにのたて』とか言ったか? まぁ、そういった組織に目をつけられるのは面倒だからな。本当は昼間の人混みが多い交差点なんかで派手に爆発させたいんだがなぁ」


鉄也

「なるほど。思考はかなりゲスだ」


 コウとゴリラを逃すのにやっぱり僕が足止めする必要はあるな……。最低でも1時間くらいは足止めした方がいいかな……。


 とりあえず、コウとゴリラの匂いがここからしなくなるまではなんとかしないと。


鉄也

「すみません。僕等が生き残る為に使わせてもらいます」


 僕はそう言い、狛犬が置かれていたであろう石の台座の根元を蹴って壊し、根元から上を持ち上げる。


 そしてコウとゴリラの目の前まで歩いて行く。


テン・バイヤア

「そんなチビなのにそんな重い物を持ち歩けるのかよ……」


鉄也

「そりゃ、鍛えてるから」


ゴリラ

「……なんて馬鹿力してんだよ、お前……」


コウ

「お前、そんな力を持っていたのね……」


鉄也

「馬鹿な事を言ってないで、さっさと逃げてよ。3人後ろ向いて逃げたら、奴の爆弾ボールが飛んできて3人仲良く殺されちゃうと思う。だから僕が足止めするから2人は逃げて」


コウ

「馬鹿な事を言ってんじゃねぇよっ!! 俺達は親友だろうがっ!! 親友を置き去りになんか出来るかよっ!! お前1人を戦わせられるかっ!!」


ゴリラ

「お前だけにそんな役割させられねぇよっ!! 俺達だってやれる事はあるはずだっ!!」


 コウとゴリラは友達想いの良い奴等だ。だから、僕をここに置いては行けないのだろう。


 怖くても、友達を見捨てない強さがコイツ等にはある。


 そんな心優しい奴等だから僕はコイツ等と一緒にいたいって思えたんだ。


鉄也

「僕だってあのピエロ男と死ぬまで戦う気はないし、そんな面倒なのはごめんだよ。今いるメンバーで僕ほど足止めの役割に向いている人はいないと思うよ」


コウ

「けどよぉっ!!」


鉄也

「大丈夫だよ。僕はあくまでも足止めするだけ。ある程度の足止めができたら僕もさっさと逃げるよ」






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