第7話

   ☆


 最寄り駅が近付く。1つ前の駅で出発が遅れたが、だいたい予定時刻に着きそうだった。 

 俺には確信があった。この答えが正しいということに。

 すべてのアイドルの皆さん、そして、そのファンの方々には心から申し訳ないと思う。でも、たとえ引退したとは言え、えなちゃんを超えるアイドルはこの世界にはいない。これから先もずっと。そして、心音以上に好きになる人はこの世界にいない。これから先もずっと。

 えなちゃんの代わりがいないのと同じように、心音にだって代わりなんていない。えなちゃんのライブ以上に心躍る時間がないのと同じように、心音さんと過ごす時間以上に大切な時間なんてない。なんでそんなことに気づかなかったんだろう。

 一秒でも早くそのことを伝えたいと思った。

 電車の扉が開くと、一目散に飛び出し、ホームの階段を速足で上った。上りきったときろで、彼女の姿が目に入った。

 帰る時間を伝えていないのに、心音は改札の外に立っていて、目が合うと右手を少しだけ振った。

 俺は小走りで向い、彼女の正面に立った。

「ただいま。えっと」

 息を吸う。

「あなたのことが好きです。えなちゃんと同じくらい」


 えなちゃんのアイドル生活が終わり、俺と心音の恋がはじまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る