第17話

 今日着ることになった海色の無地の絹のAラインドレスは、白い襟と中央に縦ラインで入っている白レースが可愛い大人しめのものだ。スカート部分が中央で分かれていて白い生地が覗いているのもチャーミング。

 男爵令嬢時代もお仕事関係でそこそこ良い服を身につけるようにしていたが、今回結婚を機に恥をかかないように仕立て直したこのドレスは、従来のものとは比べられないほどに生地がいい。デザインは同じものであるにも関わらずこんなにも違うものかと感心したのは記憶に新しい。

 そして、この服を仕立てる際にいつも通り既製品を購入しようとしてマーサさんに劣化の如く叱られたのも記憶に新しい。


 うん。仕方がない。わたしはドレスになんて興味がないのだから。


 ふわふわの猫っ毛を丁寧に梳いて三つ編みを作り緩めのシニヨンを作ったルビーさんに、ピンクパールのコームヘアアクセサリーをつけてもらうように頼みながら、わたしは実家から持ってきたアクセサリーを吟味する。

 仕事のたびに買い込んでいたアクセサリーは、公爵夫人として使用しても問題ないレベルの粒揃いだ。だから、わたしはここに嫁いできてから服以外に何も購入していない。

 そもそもつけて歩く先がないのだから、たとえ大好きな宝石であっても無闇矢鱈に購入すべきではない。宝石は身につけてもらってこそ、その真価を発揮することができるのだから。


 悩みに悩み抜いた結果、わたしはピンクパールの耳に沿う形のイヤリングと人差し指につけるリングをつけることにした。

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