第12話

 かく言うわたしも、その血を色濃く受け継いだ人間のうちの1人。


 わたしは幼き頃から地質学に興味があった。

 発掘されきった分野で、新しく発見することなんてあまりない。

 発掘作業で出てくる化石も、地震によって生まれる断層も、人類の神秘と言っても過言ではない琥珀も、何もかも調べ尽くされていた。

 でも、わたしはその美しい土の中から生まれる輝かんばかりの可能性を秘めている宝石に、心を奪われてしまった。


 きらきらとまぶしく輝くカット方法はもちろんのこと、宝石の鑑定方法やごく一般的な値段の付け方、石言葉など徹底的に頭に叩き込んだ。


「ほぅ………、」


 今日のわたしが見つけた宝石、それはこれでもかと言うほどに大きなアメジストの結晶だった。屋敷の奥深くの物置部屋に布がかけて置いてあった。本当に勿体なさすぎる。こういう石は光の当て方次第で、この世にあるどんなに美しいインテリアよりも、人々を魅せるインテリアになるのに。


 葡萄よりも瑞々しい紫に、カットも削られることもされていない、大きな大きな凸凹した形のアメジストの原石。

 何十、何億もかけて世界が作り上げた叡智の結晶。


「あぁ、綺麗だわ………、」


 あまりの美しさに感嘆の吐息を止めることなんてできない。


「マーサさん、こちらのアメジストを北階段の踊り場に飾ってください。そして、あそこにあった気色悪い厨二病炸裂の兜を避けておいてください」

「承知いたしました、奥さま」


 アメジストは叡智、深い愛情、献身、心の平穏を象徴する。よって、”害悪から身を守ること”や”誠実さ”を意味すると言われている。このお屋敷にはあまり必要のないパワーストーンかもしれないけれど、わたしはお守りとしての需要が高いこの石を見えるところに置いておきたいと思った。

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