第6話

 ………わたしの旦那さま、エドワード・アーデルハイトさまはわたしより7歳年上の27歳。アーデルハイト公爵家は歴史的にも古く、建国以前からこの国に使える重鎮の一族で、王弟であらせられる彼は、16歳の時に後継のいなかったアーデルハイト公爵家に養子入りしたらしい。

 らしいという言い方しかできないのは、わたしがそういう貴族の噂とか常識にものすごく疎いから。宝石以外はどうでもいいと思っていたわたしは、一般教養は完璧にしているけれど、貴族の娘としての淑女教育はそこそこ………否、全くと言っていいほどに真面目に受けていない。


 うん。

 この家に嫁がないといけなくなるならば、もっと真面目にやっておくべきだった。


 今から先が思いやられる事案に途方もないため息をついたわたしは、でもすぐに首を横に振った。


「まあでも、あの非常識人は愛することのないわたしを連れて社交会になんて出ないでしょうし、問題ないわよね」


 くすっと笑ったわたしは、ごろんと再びベッドにダイブした。

 可愛い可愛い弟と一緒に寝ない夜は久しぶりで、わたしはその日、とても疲れていたはずなのになかなか寝付くことができなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る