第7話
次の日の朝目覚めても、わたしの思いはすっきりとすることも、いつもみたいに生き生きとすることもなかった。
『お前が許可なくこの屋敷の外に出ることは許さない。望むものは割り当てられた金額の中で勝手にやりくりしろ。俺は城勤めで基本的にここに帰ってくることはないから、この屋敷ですこに過ごせばいい。ただし、———俺には干渉してくれるなよ?』
昨夜帰宅してすぐに旦那さまに言われた言葉。
だから、わたしはもう仕事に行くことすらできない。
大好きだった宝石は捨てる以外の道なんて残されていない。
「はぁー、」
目が覚めて顔を洗ってさっぱりしたはずなのに、身体はどろどろ崩れ落ちていくみたいに憂鬱で、生きている意味が分からない。
結婚初日でこれとは、先が思いやられすぎる。
大きな姿見の前に立ったわたしは、そのくるくると巻いた薄茶の猫みたいな髪を憂いげに下ろし、垂れ目で大きなシトリンの瞳に闇を灯す自分の姿に苦笑した。人よりもほんの少し複雑な輝き方をするお母さま譲りの黄色いシトリンの瞳は、わたしの自慢だった。なのに、今はその輝きを失なっている。そもそも、どうやって輝いていたのかすらも分からない。
ここ2週間まともな休眠休息を取らず働いていたため、わたしの目の下にはこれでもかというほどに濃い隈が刻まれていた。頬も少しこけてしまっている。そういえば、最後にまともな食事を取ったのはいつのことだったのだろうかと考え始めた頃、その音は響いた。
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