17.ドラゴン少女の歓迎会(後)
後はもうお祭りだ。
ジーナとエウリィとレーヴェがやいのやいのきゃあきゃあと姦しく騒ぎ始めてしまった。
同年代の少女同士仲良くしておいてくれい。
俺は酒と料理を楽しみたいんじゃ。
「旦那ァ……いつか刺されやすぜ」
なんなのもう皆して刺される刺されるって失礼ね!
あたいだって好きでこんなことしてるわけじゃないんだからねっ!
「いやぁ……タナカの兄貴は絶対好きでやってるだろぉ。同じ男だからそういうの分かるぜ」
「あぁ……タナカの兄貴はガチだ。だからエカーテさんには近づかないでほしいんですぜ」
あ、そういうのやっぱり分かっちゃう?
っぱさー、女の子って小さい方が可愛いじゃん?
俺、ロリコンじゃないけどさ。身長は低い子の方が好みなんだよね。
「野郎、
「エカーテさん離れた方がいい。あの男は犯罪者だ」
「タナカの兄貴……残念ですぜ」
るせー! お前らだって
「あ、あはは……タナカさん、お酒もほどほどにしてくださいね?」
何を仰るエカーテさん、俺はまだ全然酔っていませんとも。
そちらこそグラスが空いてますよ。ほらほら遠慮なさらず。
「あ、そんな、こんなお高そうなお酒なのに」
いいんですよ。
夜はまだ始まったばかりなんですから、美味しい料理にお酒にとゆるりと舌鼓を打ちましょう。
こんな路傍の石ころたちは放っておいて、ね。
「おぉいジーナの嬢ちゃん! おめェの旦那がまた別の女に手ェ出してんぞォ!」
「こらーっ! めをはなしたすきにおまえはまたー!!」
あっ、テメコラッ! 何上手いあしらい方発見してやがんだ!
痛ッ! こらベイビーちゃん! すぐ噛むのはおよしなさい!
***
料理は全て皆のお腹の中へと収まり、パーティはお開きとなった。
結構な量があったが、男が四人に女が四人の計八人ともなればこの程度瞬く間にペロリである。
さあてメシも食ったし風呂入って寝んべ。レディの皆さまはお風呂はどうするべ?
「そうですね、皆で入りましょうか」
「む……後がつかえるなら早く済ませるべきか……」
「なーちゃんはきのうみたいにだんなさまといっしょにはいりますよ」
おっとぉ藪蛇っ。
「あんたお兄ちゃんと一緒にお風呂に入ったの!? ずるい! わたしも一緒に入る!」
「破廉恥が過ぎるッ! どうしてお前らはそう簡単に肌を見せるんだ!?」
「うるさいですね! どうせおまえもだんなさまといっしょにはいりたいんでしょう!」
「そんなわけあるかッ! ……おい亭主何ニヤついている!?」
よおし皆で一緒に入っちゃうか!
「入るわけないだろう馬鹿者ッ! 亭主も真に受けるなッ!」
えぇー。
「来いお前たち! さっさと行くぞ!」
「いーやーでーすーっ! なんでこむすめたちといっしょにはいらなきゃいけないんですかっ!」
「お兄ちゃーーーん!? 次は絶対わたしと一緒に入ってよねーーーッ!?」
「あ、あはは……早めに入浴を済ませますので……」
ごゆっくりぃー。
*
「旦那ァ……あんたがそんな人じゃないってのは分かってるが、あのジーナって子は本当に大丈夫なのかい?」
レディたちが居なくなった後、盗賊がそんなことを言ってきた。
大丈夫って何がだよ。
「ああいうぶっ飛んだ思考の持ち主は大抵心がヤられちまってる。過去に辛い目やヒデェ目に遭った奴とかがああいう感じだ。で、そういう手合いのは、庇護を求めてかよく悪い男に引っかかったりするもんでね」
……うん。何か壮大な勘違いをしてらっしゃる。
まぁヤツの思考がぶっ飛んでるのは事実だが。それもドラゴンだから仕方あるまい。
というかあれか。
ドラゴンってめっちゃ嫉妬深いし、自分の宝を狙うヤツに対して容赦しないんだよな。
メリュジーナもドラゴンの本能に漏れず、嫉妬深いし独占欲が強いんだ。
……どうしよう。俺このままだとマジでどこかに連れ去られて監禁とかされるんじゃなかろうか。
「おいおいタナカの兄貴ぃ、顔色が悪いぜ?」
「もしも今更怖気付いたんなら……俺らがなんとかしますぜ」
いやいや、流石にお前らじゃどうにもできんわ。
真相知ったら泡吹くで。
引き連れて来たからには、最後まで責任取って面倒見るさ。
お前らには迷惑掛けんよ。
「旦那がそう言うんならあっしらは何も言いやせんぜ。……そうだ、あの子身分証は持ってるんですかい?」
ああ、そういえばそうだ。確かにいるな。
用意しなきゃだ。
「でしたら早めに
何ぃ? マジか……めんどくせぇな。
と言っても身分証なしじゃ不都合が多すぎるからな……。
しゃーない、明日服を買うついでに寄るか。
*
その後レディと交代で風呂に入った。
むさ苦しい男どもと一緒だったせいで地獄であった。全然さっぱりできんわ。
そして風呂を上がったら再び姦しい言い争いの声が聴こえてきた。
「こればっかりはゆずれないのです! なーちゃんはだんなさまといっしょじゃないとねないのです!」
「貴様はいつまで駄々をこねるつもりだ! いい加減にしないか!」
「もう皆で一緒に寝ればよくない? レーヴェちゃんもさぁ」
俺の寝室兼事務室でヤングガールズどもがキャアキャア騒いでいる。
エカーテさんがその横でどうしたものかとオロオロして困っておった。
彼女を困らせる奴は誰であろうと許さねえぜっ。
これこれ君たち、夜中に騒いじゃいけませんよ。
皆の迷惑になっちゃうからね。
「む……! だ、だが、男女同衾はダメだろうが……!」
「えー、別によくなあい? だって皆お兄ちゃんのこと大好きだもんねえ?」
「こむすめどもはだめです! だんなさまはなーちゃんだけのものです!」
この中で一番一緒に寝たいのはエカーテさんなんだが。
多分それ言ったら八つ裂きにされるな。
しかし、うーん……。
あんまりベイビーちゃんに我慢させ続けるのもよくないよなあ。
レーヴェとエウリィ、今日は勘弁してやってくれないか。
こう見えて心細いんだよ、この子は。
知らないところに来たばっかりで、知ってる人が俺だけなんだ。
あまり寂しい思いをさせたくない。
頼むよ。
「……亭主が、そう言うのであれば……」
「じゃあ次はわたしと一緒だよ? 絶対だよ?」
ああ、次は一緒におねんねしようね。お嬢様も一緒に。
「私は不要だッ!」
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