04
気持ちの良い青空に思い切り手を伸ばして深呼吸すると、あらためて下界を見渡してみた。次はあっちの東屋を見てみようか。
池と次に目指す東屋の間にはちょっとした芝生の広場がある。
いつの間にか10人ほどの集団が拡がって太極拳みたいなことを始めていた。
全員薄紫のダボっとした作務衣みたいな服を着ているのがちょっと異様。
仲良しサークルってかんじではないよね。しばらく上から観察してみましょう。
ヨガと太極拳の違いもはっきりとは知らないけど、ゆったりとした動きのなかでも拳法の型のような決めポーズがあるみたいだ。ただ、その決めを繋ぐ間の動きがなんか無理やりというか、人間離れした関節の使い方に挑んでいるみたいにも見える。
なんだこれ。現代舞踊ってやつかな。
そう思ってみるとみんな売れない役者みたいにも見えてくる。
ぴったり息の合ったワカメの兄弟みたいなゆらゆらした動きから、徐々に徐々にテンポがあがって各々がトランス状態のバラバラな痙攣ぽい動きになってきた。
空を仰ぎながらひたすら小刻みに飛んでるやつもいる。
いやー、やっぱこれなんかやべーやつじゃん。と思いながらも、ついつい目を奪われてしまった。これも芸術ってことになるんでしょうかね。
てなことを思いながらにやにや眺めていると、何かどなりながら集団に近づいてくるちっさなお爺さんが目に入った。遠目でも結構な剣幕に見える。
ご近所のガミガミ爺さんってとこだろうか。
まくし立てているけど、声が通らないのか滑舌が悪いのか何を言ってるかはさっぱりわからない。集団のほうはかまわず踊り続けるので、爺さんの怒りは収まらずにとうとう手を振り回しはじめた。あららー。こっちもやべーやつかな?
アタシは不謹慎な笑いがこみ上げるのを感じつつ次の展開へ向けてスタンバイする。
ついに集団のひとりが爺さんに対峙した。
とは言ってもそちらはあくまで冷静なかんじだ。
背が高く綺麗に整えられた髪型で細面に銀縁メガネ。
へんな作務衣を着ていなかったら超マジメなサラリーマンて雰囲気。
爺さんの怒りをいなしつつあやしているみたいに見える。
そんな態度が逆に爺さんのカンに触るのか、ついに爺さんがメガネを突き飛ばした。
っても、身長半分くらいなのでこどもが駄々こねてるみたいにしか見えないけど。
これでメガネはともかく周りに火がついてしまった。
威嚇するように爺さんの周りを取り囲む。
集団に囲まれても爺さん一歩も退くつもりはないらしい。
爺さんが「返せ!!」って言ってるのは聞き取れた。
頃合いかな?とアタシも小山の下まで降りていく。
爺さんが拳を振り上げると、集団の中でもガタイのいいのが素早く後ろに回って羽交い絞めにした。デタラメにもがく爺さんが蹴りだした脚を別の一人が抱えて持ち上げる。アタシはその喧騒に向かって猛ダッシュ。
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