第7話 ぽいぽい

「今この子たちは一体、何を喜んで何を要求してるのかな……? 希瑠子はどう思う?」


 鳴き騒ぐ2匹のモフェアリー。むらさき頭のフジは嬉しそう。ピンク頭のモモは興奮気味だ。


 爽子の問いは表情を見るに純粋な疑問なのだろう。けれど、さきほど怒らせてしまったばかりなので、彼女の想定した「正解」を当てねばならないのかと身構えてしまう。

 いずれにせよ私に思いつく答えはこれしかなかった。


「フジちゃんは助かって嬉しい。モモちゃんは仲間を危険に晒した私に怒ってる」


「うん。ボクもそれ思ったけど……モフェアリーは仲間との連帯感が強いけれど複雑な思考はできないんだ。フジちゃんはご機嫌なのに『仲間が許してもボクは許さないよ! 危険行為はダメ絶対!』みたいなことをモモちゃんが思うかというと、違う気がする。自分も同じ目に遭ったなら別だけど……」


「もしかして……落下して受け止めてもらうのを楽しい遊びと思ってるのかな」

「それだ!」


 爽子は試しにフジを手にとり、かるく放りあげて両手で受け止めた。トランポリンみたいだ。


「ぴわっ♡ ぴわぁ」

「本当に喜んでる。希瑠子、よく気づいたね」

「ぴぃー! ぴぃーぃ!」

 モモは順番を待ちきれないのか、私に向かって、より激しく鳴き出した。ちょっと怖い。

 フジを箱に戻しモモに交代させても同様だ。

 

 見かねた爽子は、なんと2匹のモフェアリーでお手玉を始めた。

「よっ、ほっ、はっ」

「ぴわっ♡」

「ぴわぁ♡」

 ぽい、ぽい、と宙に浮かぶモフェアリーたち。

 ふと、方向がそれて私のほうに一匹とんできた。

「ぴぅ……」

爽子はそれもキャッチして即座に軌道修正した。

「ぴわわ〜♡」


「モフェアリー専用の! 絶叫マシンに! ボクはなる!」


 モフェアリーたちはハイスピードで空中に弧を描いている。まるで見えないレールがあるみたいだ。


 やがて疲れてくると、爽子はなめらかにモフェアリーたちを手のなかに回収した。

 2匹とも離れようとしない。


「ねえ、2匹とも爽子がもらってくれない?」

「そうだね……それがいいと思う」

 小動物用のキャリーケースが一匹分しかないというので、箱ごとあげることにした。


「ありがとう。今までお世話おつかれさま」




(続く)







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