第4話 あつあつ
ピザの端からこぼれおちたマッシュルームに駆け寄るフジちゃん。
熱すぎるのか、口をつけないうちに後ずさってしっぽを膨らませた。
「威嚇のポーズだね。やっぱりほかの食べ物をあげようよ」
爽子は言うが、私たちのどちらもモフェアリーたちの反応から目が離せない。
モモちゃんはというと、キノコの欠片に見向きもせず、湯気をたてるピザのまわりをウロウロしている。
ところで、爽子はポテトサラダに林檎を入れる。今日のタラモサラダも例外ではない。私は私で、ピザにサイコロ状に刻んだパイナップルをトッピングするのが好きだ。
モフェアリーは雑食だけど、キノコよりはフルーツを好むのが多数派らしい。
モモちゃんは林檎やパイナップルを食べたいみたい。
勇猛果敢にパイナップルに齧りつく!
次の瞬間、熱さに驚いて大きなしっぽの倍も跳び上がった。口と前あしについたチーズが真上に糸をひく。
「?! ……!?」
とれないチーズの糸に抗ってモモちゃんが狭い箱のなかを右に左に走る。そのぶんチーズも伸び縮みする。
やがてチーズは冷めて伸びきったゴムのように固まり、モモちゃんは開放された。
「……ぴぅ」
モモちゃんはうずくまって一息ついた。
「ぴーーぅーーー」
悲しげな声に、フジちゃんが寄り添い、モモちゃんのふわふわしっぽを撫ではじめた。
モモちゃんはやがて起き上がり、しっぽなでなでのお返しをする。
爽子は自分のサラダから林檎のかけらを2つフォークで取り出し、コップの水で洗って巣箱のなかのモフェアリーたちのそばに置いた。
2匹はあっという間に食べた。
やわらかなほっぺが林檎のかけらのかたちに出っぱり、すぐもとに戻る。
私も爽子に倣って林檎のかけらを置いたが、モフェアリーたちはそれを素通りした。
そして、さっきよりは熱くなくなったピザのトッピングに元気に挑んで行ったのだ。
魅惑のふわモフしっぽをこちらに向けて、両者もくもくと口をつけているようす。
「そっちを食べるんかい!」
私たちは声を揃えてツッコんだ。
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