old tales.4 精霊と生き方
その出会いは大きく私の生活を変化させた。
というより、元より芽生えつつあった興味を開花させた。
朝起きて寝るまでの間、外では常に雨が降っていた。
その退屈を紛らわすかのように、その人は私たちに話題を与えた。
一番影響があったのは間違いなく自分であると思った。
以前より人と話すことが楽しく感じられた。
そんな心境の変化も彼女のおかげであると思うけれど、話しかけてくれるようになった人たちや、職員にも心の変化が起こってくれたからだと思う。
他人の気持ちを考える、と言うのも教わったことのうちの一つだった。
もちろん良いことばかりが起こったわけでもなかった。
彼女が訪れてから4カ月が過ぎようとした頃、
宿舎が使い物にならなくなった。
宿舎に起こるようになったその異変を薄々は感じていたけれど、ある朝起きたときにはもう手遅れになっていた。
最初は雨漏りから始まった。
どこからか聞こえる、ぽつん、ぽつんという音が夜の静まり返った寝部屋で響いた。
元気な声がざわめくときと違って、雨の降る音は不思議と不快ではなかった。
ぽつん、ぽつん、と雨漏りのする音も心地よいとまで感じた。
すると、
«もしかしたら、この雨のせいでこの場所がだめになってしまうかもしれませんね»
彼女が、ペテロダは、宿舎の雨避けになるようにと大きな木を生やした。
はじめは小さな苗木が、日を増すことに、なんといえば分からないけれど1日過ぎるとまるで木だけが10年過ごしたような、そんな雰囲気だった。
なにせ、その間ペテロダは木を気に掛けるような素振りはまるでなかった。
木は1週間としなうちに大きな、大きすぎる、歴史が感じられるような大木となった。
木を気に掛ける、なんてシャレを真に受けて、こそこそと笑う意外な一面を持つペテロダに出会うのはもう少し後のこと
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