努力の結晶
夜禅夜禅、修行修行と、早二週間が経過した。
十番隊のみんなは呼吸法を習得し終えていた。今は原罪と贖罪で武器を生成する修行に加え、今回の修行の目標地点である<舞>を習得しようとしているところだ。
「ヴィザル、ベル、ミツハ。君たちは天種降臨の武器を生成してぼくにかかってくるんだ」
『はい!』
「己の持つ組手も使って全力で来るんだ」
「神託――
「神託――
「神託――
十番隊の隊員たちは
この短期間でかなりの成長を遂げている。
あぁ、懐かしい感じがする。かつてみんなとこんな感じで己らを高めあったような気がする。あれはいつの事だったのか……。
そんなことを思い浮かべているぼくに、三人は攻撃を繰り出してきた。
そうだ、それでいい。相手に考える暇を与えさせるな。実践では考えさせる時間は命取りになる、ましてぼくたちが相手にするのは知能を有する怪物たちだ。何をしてくるか分からない相手に時間なんて割いていられない。
『はあぁぁ!』
「神託――十束剣」ぼくは武器を生成して迎撃にあたる。
と、そこで暇そうにしている五人が目に入ったぼくは、
「他の五人は五属舞を使ってぼくに一撃を当ててみろ」
「言われなくてもな! 演舞――炎之舞」とアーサーはぼくの指示を待っていたとばかりに跳躍した。
「演舞――風之舞」とサティヤはアーサーに続いた。
「演舞――水之舞」とルーナ。
「演舞――雷之舞」とジュノ。
「演舞――土之舞」とヘレーラ。
まだまだ足運びはおぼつかないように見える。それでも一つの属性なら舞えていられるようだ。
うん、本当にみんな頑張った。たったの二週間でここまで舞えるようになるなんてぼくは思わなかった。
ぼくに武器を振ってくる彼ら彼女らをぼくはあしらう。日々続く八対一の修行でぼくも少しは成長できたのかもしれない。
「呼吸の乱れは死を意味するよ、己の体力を考えながら舞うんだ」
「隊長殿は余裕そうですな」
うむ、良き呼吸法だ。五属舞の途中で話せる余裕がでてきたということは肺が強化されている証拠だ。
しばらく武器と武器がぶつかる音が響いた。乾いているこの音も聞き飽きた、もうそろそろみんなの体力は限界だろう。
「止め!」
ぼくは声を上げた。
「なかなかさまになってきたね。今後は五属の呼吸法を循環させて無限に五属舞を舞えるようにするんだ。さすればけもの相手でもうまく立ち回れる」
荒い息遣いをする隊員たちに向けてぼくは言う。
気が付けば一時間も経過している。みんな立っているのもやっとだろう。
「休憩にしよう。一時間、いや三十分で全回復させるように」
ぼくが言えば、皆は人工芝生に崩れ落ちた。
『はぁ、はぁ……はぁ』そんな息遣いばかりが聞こえる。
たったの二週間でここまで完成度を上げてくるとはあっぱれだ。
彼ら彼女らを褒める? そんなことは必要ない。生き抜くための術なら全力でやらなくてはならない。それが無駄になったとしても、ぼくたちは何事も全力でやらなければならない。
現代は復興の時代、手を抜かれては怒りを覚えるだろう。
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