天種降臨

 女性隊員は――ルーナ、ヘレーラ、サティヤ、ベル、ミツハの五人だ。三相劃の男たちとは違い、彼女たちの組手や呼吸はなかなかに優れたものだった、なので修行は第二段階に入る。


 武器の生成。


原罪シード贖罪ソイルの調和――それ則ち天種あまくさ降臨、己のこころに宿る武器を生み出す力なり。武器の生成は原罪だけで十分だけれど、夜禅部隊たる者、贖罪を使わずして舞は制御下に置けない」


 ぼくは言い、原罪と贖罪の力を使い武器を生成する。


「神託――十束剣とつかのつるぎ・千戦一式」


 ほら、真似してみなさい。とぼくは彼女たちに言うが、


「そんな簡単にできるわけないでしょ」「贖罪って難しいんだよね。原罪と違ってシュピピ、ピカーって感じじゃなくてカチカチのえっさほいさって耕さなくちゃいけないからさぁ」


 そう言ってルーナとヘレーラは肩をすくめた。


「武器を使って舞を踊る。それが夜禅部隊の戦い方だよ、両親に習っていないのかい?」


 ぼくが訊ねると、


「両親が出てくると御家の問題でしょ、家庭内の問題なのよ」「わたしの御家は忙しいから、お母さん原罪についてしか教えてくれなかったんだよねぇ」「七道巫の中でも十番隊の五人はまだ構ってもらえた方ですけど、星守の一族五番隊長百鬼の一族二番隊長は凄いですよね。独学で舞を習得してしまうのですもの」「そうだね、巫の中でもキキョウとシオンはわたしたちとは違うよね」「そうですね、舞うことを朝飯前と言うくらいですから」


 なるほど、この女子たちは七道巫の御家出身故に両親に構ってもらえなかったのか。ふむ、原罪だけ使えるようになったとしても十二支の獣相手には立ち回れないだろう。


「舞については置いとくとして……贖罪の使い方を表現するに、耕すというのは合っている。しかし耕すだけでは贖罪は答えてくれない」


「じゃあ、どんな感じ?」


 と、ルーナの質問に対して五人はぼくを見つめてくる。


「――土を作る。それが一番合っている表現だ」


 硬い土地を耕したところで雨降って地固まる。だから堆肥などを撒いて耕す、そうすれば土地に微生物が増える。微生物が増えるということは、根を張るのに苦労する硬い土地は微生物によって耕され、根を伸ばせる土地へとなる。


 重要なのは贖罪に感謝することだ。贖罪は食材というから、感謝の気持ちが大切になる。


「この部隊に前職百姓なんていないわよ」とルーナは悪態をつく。


「そうそう。みんな前職狩猟部隊だよ」ヘレーラはルーナに相槌を打つ。


 狩猟部隊出身であっても上級の理想郷生物と戦ってきたはずだ。そこで原罪だけでは硬い装甲を攻略出来ないと教わったはず。


「つまり、上級のアルカディオスの装甲は原罪で生成した武器だけで貫通させてきた、ということですか」


 ぼくの質問に対して女子たちは頷いた。


 流石、七道巫の一族出身。原罪の強さで言ったらぼくよりも遥かに上だ。


 そうなれば、


「君たちは文法を極めることで今と違うセカイを観れる」ぼくは言う。


「はぁ? 文法って何?」ルーナは怪訝な顔で訊いてくる。


「それは君たちの中に眠っている」


 こればっかりはどうしようもない、自分で気付くしかないんだ。


「さあ、今日の修行はここまでにしよう」

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