失恋

@sakuramai0108

失恋

「逃げられるかもって,ほんの少しだけ思ってた。もしかしたらって思ってた。でも、ごめんね。無理みたいだ。」

そう言って淋しげに今来た道を振り返る彼。

そんな彼の瞳は、透明なガラス玉のようで。未来なんてひとかけらも写してはいなかった。

私の想いと共にあふれだす涙を優しく拭って。

「もう、お別れみたいだ。今まで...ありがとう」

やめて。言わないで。

そう願って彼の手を掴んだ私の手はあっさりと振り払われる。

「ごめんね?」

そう悲しく微笑んだ彼の瞳は、私なんて写していない。

写していたのは、私の⋯

「ごめんね」

影だったの、かな。

そうして今度こそ、今来た道を戻って行った。

本来彼が居るへき場所に。彼を待つ人の元へ。

叶わないと分かっていても、彼を求めてしまう。

私が何をしたというのですか?

そう、変わる事などない運命に問いかける。答えなんて返ってくるはずもないのに。

振り返ることのない背中を見つめ、儚い希望はあっさりと打ち砕かれた。

地面に崩れ落ちた私の上に広がる空は炎のように燃えていて。

正反対の私の心を追い出すかのように。

私をどこまても深い闇に突き落とすように。

私の心をジリシリと燃やしてゆく。

燃え尽きた後に残るものなんて、

もう、何も……


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