第4話 事故

「ソロソロ、ジッサイニノッテミテモイイコロダ。」


「なんだと……!いくら旧式の戦闘機で覚えることが少ないからって、二日目は辛すぎる!」


「×××××」


「これからは、こちらの、私の通訳が話せる。」


「つまり、これからはあの方達の言葉をあなたが通訳してくれるんですね?」


「そうだ、です。まず、六機編隊での水平爆撃隊訓練をする、だから飛行訓練成績上位六名、出ろ、です。」


少し、ジェパン語がおかしい気もするが、まあわかるからいいだろう。そう思いながら、昨日の飛行訓練の成績表を見る。


「これより上位六名を発表する。これから名前を呼ばれた者は前に出て欲しい。僕はいいとして、秋斗、タカヒロ、ヨウヘイ、コウタ、ナオト。以上六名!」


「「「「「おう!」」」」」


頑張って声を張り上げて喋ったからか、ずいぶんと威勢のいい声が返ってきた。


「通訳さん。六人揃いました。」


「わかった、です。六人以外は、地上で、訓練していろ、です。」


どうやら、この人も軍の人間らしい。あの軍人さんたちと話さずに、僕に指示を飛ばしてきた。


「了解しました。指示を伝えてきます。」


指示を伝え終わると、僕たち六人は格納庫へ案内された。


「「こ、これは……!」」


格納庫に入って、戦闘機を目の当たりにした時、軍事オタクである僕とヨウヘイの声が重なった。僕らの視線の先には僕らの祖国、かつて大日本帝国と呼ばれていた、その当時の数々の戦闘機たちが並んでいた。


「こっちが零式戦闘機、あっちは紫電改⁉︎飛燕ひえんまで⁉︎それも各戦闘機三個小隊程度はあるのか……」


「祖国のものなら動かしやすいだろう。と思ったです。これらは、もともと我が国の所蔵してたです。」


「なぜこんなにたくさん所蔵できたんですか?」


「大東亜戦争中、に、我々の国は日本の占領地だった、です。その時、大量に運びこまれ、放置された、です。それを我々は、今まで整備してきた、です。


「ここは、かつての満州国ですものね。よくここまで残存機が残ったものだ。それも運び込まれた戦闘機のほとんどが数は多少減ってはいると思いますが残っている。この様子だと他の武器もでしょう。」


奥には爆撃機と思われる図体の大きな飛行機もあるし、横の壁には九九式小銃や九二式重機関銃などがかけられている。そして、残念なことに、端には桜花おうかが十機ほどと回天かいてんが二十機以上置かれていた。


「ああ。もちろん、です。必要であれば他の兵器の訓練もさせる、です。でも、あっちに置かれている自殺兵器は使わせない。です。」


桜花や回天を自殺兵器と認識していることから先代から知識は受け継いでいるのだろう。


「流石に桜花と回天は誰にも使わせないです。たとえ命令があってもです。」


「今日、は、紫電改で訓練する、です。」


「紫電改ですか。」


紫電改は総数は420機ほどにとどまったものの、零戦や当時の数々の戦闘機に迫る戦闘力を誇っていた。当時の日本において最強の部類に入る戦闘機だ。


「よし、僕たちはこれから紫電改操縦訓練を始める!総員、指示を待つように!」


「一人一機、後部座席、にはこちらの軍の者がサポートに入る。です。隊長機にはお前と私が、それ以外は任せる、です。」


「「「「「「了解!」」」」」」


そういうと、僕たちは紫電改に乗り込んだ。


  ☆


『こちら二三四!二三三へ!二三八番機に敵襲!』


「二三八番機だと、ナオトか!こちら隊長機!二三八番機!緊急脱出しろ!」


『こちら二三八番機、緊急脱出装置の紐が切れてます……切れ目からして日本軍が切ったようです……!緊急脱出不可能!』


「緊急脱出不可能……敵機は⁉︎」


『敵機はF-20と推定、数は二機。航続距離内に敵地の滑走路はないため、空母がいると思われる。隊長……いや、鉄也。俺の分も頑張ってくれ。あと、俺のサポートをしてくれたサビディエゴさんの分も。』


そういうと、僕たちの無線は途切れた。

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The Power Of Children Is Limitless 能依 小豆 @azukiman

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